片想い
きっと罰が当たったんだ。
俺は練習の後、顔を洗って円堂さんを探していた。
円堂さんはいつも練習の後、グラウンドと備品の点検をしてから上がるから、最後までグラウンドに残っている。
俺は円堂さんに聞いてほしい事があったけど、今日は中々円堂さんと話す時間がなかったら、円堂さんを手伝いながら少しだけ話を聞いてもらおうとしていたんだ。
(ムゲンザハンドの事と、あと明日の練習メニューの事と、あ、そうだ今日夕飯隣で食べてもいいですかって…)
色々考えていた「円堂さんに聞いてほしい事」を思い返しながら、円堂さんを探してグラウンドをうろうろとしていた。
(あれ、円堂さん…どこにいるんだろう)
いつもならすんなり見つかるはずなのに、と首を傾げていると、雷門サッカー部の部室の影から人の気配を感じて振り返った。
「…ちょっ…だ…て」
(円堂さんの声だ!)
ぴくりとその声を聞き分けた瞬間、自分のテンションがグッと上がるのを感じておかしくなった。
「…少しだけだ」
「だから、ちょっ…」
小走りに近づいて行くと気配はもう一人分あって、どうやら円堂さんは一人ではないらしい。
(…あぁ、円堂さんと二人だけで話したかったなぁ)
今度はそんな事で一気に急降下する自分の気分に苦笑する。
(…端からみたら俺って円堂さんが大好きな犬みたいだ)
自分で考えて妙にそれが合てはまっていて、俺はまた苦笑した。
(円堂さんの犬になら、なりたいな)
これってちょっと危ないよな、と思いながらも「へへ」っと笑って流れてしまう。
(あ、れ…)
漸く部室の影が見える所まで来て、俺は立ち止まる。
(あれは)
「ん…」
(円堂さんと…)
「…っ」
(豪、炎寺さん)
二人が普通に話すにしては有り得ないくらいくっついていて。
(話、なんてしてない…二人は、)
深い深い、キスをしていた。
「…っ!」
ハッとして俺は二人に気付かれないよう踵を返して走り出した。
(なんで、なんで?なんで…円堂さんと豪円寺さんが)
「…付き合って、いるのかな」
ポツリと呟いて、胸がギリギリと痛んだ。
(なんで?二人とも、男なのに…でもキスは付き合ってる二人がするもので…でも付き合うって男女の関係のことなんだってずっと俺…)
(俺…そう、思ってた…から)
(だから俺は、)
「なんだ…これ」
痛い、痛い痛い…胸の奥とお腹と頭が一斉に痛くなった。
(なんで?なんで、なんで…なんで!)
こんなにも胸が痛むのはだって。
「だって、俺だって…円堂さんが…好き」
なのに…。
僕は俯いたまま目を閉じてぐっと両手を握り締める。
口に出して初めてわかった。
自分の円堂さんへの好きの種類がそういう好きだということに(いや、本当は気づいていたけど、叶わないからと諦めて認めていなかっただけなのかもしれないけれど)。
「…違う、俺は…円堂さんに憧れてて」
咄嗟の否定は酷く言い訳じみていた。
そう、最初は本当に…ただ一心に憧れていて。
目の前に居ても手の届かない、唯一絶対の俺の神様だった。
それが一緒にプレイできるようになって、円堂さんは俺を「凄い」と認めてくれて、頭を撫でられて、手を繋いでくれて、話を聞いてくれて、声を掛けてくれて、笑い掛けてくれて、励ましてくれて、だから…
だから。
「…好きに、なってしまって…」
なんて、酷い自惚れを、してしまっていたんだろう。
俺はいつの間にか、どんどん円堂さんを求めてしまって。
(最初は、握手してもらったことが嬉しかったのに)
(同じチームに居られるだけで幸せだったのに)
(ただ遠くから見ているだけで良かったのに)
いつの間にか、もっともっとと…
欲が、出たから。
だからこんなにも胸が痛いんだ。
きっと…罰が、当たったんだ。
恐れ多い欲望を抱える俺に、本当の神様が、きっと。
叶わない…身の程しらずの恋なんて、ずっと気づかないままでいたかった、のに。
(円堂、さん…)
終
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言い訳
次は両思いラブラブで立円…!
ごめんね立向居…!
ここまで読んで下さってありがとうございました!!!