友情最前線
皆仲良し一年は組。
皆大好き猪名寺乱太郎。
勿論乱太郎も皆が大好き。
そんなのはわかってる。
わかってるけど、たまに一人占めするくらいいいじゃないか。
「ん…ってあいたた…っえ?」
乱太郎が目を覚ますと、そこは薄暗い部屋だった。
頭上には何本もの縄がぶら下がっていることから、此処が兵太夫と三治郎のからくり部屋だと悟る。
「えーっと、…兵ちゃーん?三ちゃーん?」
とりあえず二人の名前を呼んでみるが返事はない。
「困ったなぁ…って言うか私はなんで此処に…」
(確か私は医務室へ向かう為に廊下を歩いていたはずだ)
此処に来る前のいきさつを何とか思い出そうとしたが、途中からすっぽり記憶がない。
(多分落とし穴か何かに落ちて気を失ったまま此処に来たの…かな?)
兵太夫達のからくりに掛かって此処へ落ちたのは初めてではない為、自分でも驚くくらい冷静にそう判断する。
最近からくりというか罠の範囲が学園中に拡大しているのは気のせいだろうか…と恐怖に近い感情を抱きながら乱太郎が打ち付けたのか痛む腰を撫でていると、天上の辺りから明かりが漏れた。
差し込む日の明るさに乱太郎が目を細めると、こちらを覗き込む兵太夫がいた。
「ん、乱太郎ー?また落ちたのー?」
罠を仕掛けた方も呆れているような声音で言うものだから乱太郎も思わず苦笑してしまう。
「兵ちゃん達、最近いろんな場所に仕掛を作りすぎだよ」
抗議を込めて乱太郎が呟けば、引き上げてくれるとばかり思っていた兵太夫がするすると下へ降りてきた。
「仕方ないよ、学園広いんだもん」
何が仕方ないのか、兵太夫は乱太郎の隣に膝を立てると、「怪我はない?」と小首を傾げる。
「腰ぶつけたみたい…」
と乱太郎が答えると、兵太夫は何処から出したのか救急箱を広げる。
「しかし乱太郎って凄いよね、ある意味才能だよ?」
「何と無く予想つくけど…何が?」
救急箱から湿布を取り出しながら兵太夫が呟く。
「僕が仕掛けた仕掛に見事に掛かる!」
「はは、やっぱり…好きで掛かってるんじゃないけどね」
流石将来有望な保健委員だよなーとケラケラ笑う兵太夫に、乱太郎は言い返したかったが、事実は事実なので何も言えない。
「じゃなかったら、運命かも」
「はぁ?」
「乱太郎は僕のからくりに掛かって必ず僕のところにくるって運命」
ニコニコと上機嫌にそう言う兵太夫は乱太郎の上着の裾を引っ張り、乱太郎に腰を出すよう促す。
「兵ちゃんそれって認めたくないけどただの不運じゃない?」
乱太郎が呆れながらそう言い、上着をめくって素直に腰を出す。
「ひぅっ…」
「ひぅって…くくっ」
薬草の塗られた冷えた湿布の刺激で、乱太郎が息を飲む様に兵太夫がまた笑う。
「冷たいんだもん仕方ないないでしょ…」
笑われたのが恥ずかしくて乱太郎は苦し紛れに呟く。
「ぜっーたい運命」
いきなり話しを戻す兵太夫に乱太郎は「もー」とため息を付く。
「だからそれは…」
「だって僕がこんなに乱太郎のこと大好きなんだよ?」
「なにそれ」
わけのわからない理屈に乱太郎は苦笑するしかない。
「赤い糸だよ、絶対」
「赤い糸?」
兵太夫の言いたい事が分からずさらに首を傾げる乱太郎に構わず、兵太夫は後から乱太郎を抱きしめると、そのまま一緒に横倒れてしまう。
「う、わっ!兵ちゃん!わっ!!」「うーん…乱太郎を一人占め」
乱太郎に抱き着いたまま兵太夫が、その背に顔を埋め幸せそうに呟く。
「どうしたのさ、兵太夫…」
「んー…乱太郎には言ってもわかんないと思うから内緒」
「えー!?」
そのまましばらく兵太夫は乱太郎から離れないまま、二人でくだらない話を続けた。
「兵ちゃーん、そろそろ夕飯行こう?」
「んー…もう少しこのままでいさせてよ」
兵太夫の台詞は何時もの自信に溢れる生意気なそれではなく、甘えるような声音だった。
「もー…」
「そう言うなよ、乱太郎一人占め出来るって凄い珍しい事なんだか仕方ないだろ」
「何が仕方ないのさ…」
今日の兵太夫はいつにも増して屁理屈ばかりだね…と苦笑する乱太郎に、兵太夫も唇を尖らせて呟く。
「ほら、わかってない」
「だから何が?」
「まだ言わないー」
「え、また?」
クスクス笑う兵太夫は、乱太郎に巻き付ける腕を強める。
「乱太郎、僕の事好き?」
兵太夫は少し熱っぽく、大人っぽく囁くよう聞いてみた。
「うん、好きだよ?」
返って来たのは予想していた通りのニュアンスのそれで…
(それはきっと僕が乱太郎を好きな『好き』とは違うけど…)
「こうしてくっつくのも嫌じゃないだろ?」
「嫌ではないけど…」
呟く乱太郎に、じゃれるように兵太夫が絡み付く。
「じゃあ延長決定ー」
「えー」
(今はまだこのままでいいんだ…今はまだ、ね)
終
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言い訳
お…おかしいなぁ…
ネタの段階と全然違う話に…
全然兵乱じゃなくてすみません…
っていうか毎度の如く不完全燃焼(土下座
兵ちゃんはは組の中でも早い段階で乱太郎を意識していたと思います!(願望
でもタイミングを伺っているうちに遅れて気が付いたきり丸とか上級生に阻まれてなかなかくっつけない!
と、いいな(笑
此処まで読んで下さって本当にありがとうございました!