初恋の終わり



※年齢操作未来捏造です。
孫兵視点で「冬季限定〜永遠の誓い」の話です。

苦手な方はご注意下さい。

















































人間は良くわからない。
自分を含め、理解しがたい。
理解できない、それでいい。



そう、思っていた。





昔から感じる視線があった。
ある一人から発せられるその視線は、酷く熱心で、かつ真っ直ぐだった。
僕はその視線の主が誰だか知っていた(本人は隠れて見ていたつもりなのだろうがバレバレだった)。
赤い髪と眼鏡が印象的で、学園一の厄介事吸引体質、不運小僧。
猪名寺乱太郎。
初めは何故見られているのかわからなかった。
しかし不思議と不快ではなかった。
彼女達を連れて歩く事が多い僕は、良く好奇の視線に曝される事があった。
しかし乱太郎のそれはそんな視線とは明らかに違っていたからだ。



(あ、)
今日も見ている。
僕は気付かないふりをする。
「どうした?ジュンコ」
ジュンコは眠たそうに僕に擦り寄る。
「大丈夫、気になんてしていないよ」
人間なんて、気にした所でなんの意味もない。
僕には君達がいるから大丈夫。
それは紛れも無い僕の本心だった。
僕はジュンコを一撫ですると、目の前の子蜘蛛達の世話に戻る。

しかしその一方で、乱太郎から向けられる視線を少しだけ嬉しく感じる自分に気付いていた。
あいつの真っ直ぐな視線は心地良い。
ふと視線に気付く度、頬を緩めてしまう自分に少し呆れた。




「あいつは、何故僕を見るのだろう」



乱太郎が僕を見ていない時、僕は乱太郎を見ていた。
だから、乱太郎の周りに集まるその他大勢の事も自然と視界に入って来た。
皆が乱太郎を見ていた。

(何故?)

そう思った僕は、たまたま隣で飼育小屋の修繕をしていた竹谷先輩に尋ねてみる。
「竹谷先輩、何故皆乱太郎を見ているんです?」
「は?…ん?…あぁ!乱太郎、何だよお前がいきなり話し掛けてくるとか珍し過ぎて先輩嬉しくて泣いちゃうぞ?」
竹谷先輩は満面の笑みだ。
正直面倒臭い。
「はぁ、そうですか」
だからそれで?と言う話しだ。
「あぁ、はいはい、乱太郎な」
分かっているならわざわざ話を脱線させないで欲しい。
「はい」
「うーん、皆乱太郎が好きなんじゃないか?」
竹谷先輩は少し考えて、そしてぽつりと呟いた。
「好きだと見るんですか?」
そんな適当な事なんだろうか。
どうにも竹谷先輩は理論的でなくて信用出来ない。
体育委員会の七松先輩と同種の香りがする。
つまりは単純、野蛮、大雑派。
僕は決してこのイメージを失礼だとは思わない。

「だって嫌いなものを好き好んでは見ないだろ?」
「…ぁあ」
妙に納得してしまった(相手が竹谷先輩だから少し悔しい)。
そうか、確かにそうだ。

見ると言う観察行為は、興味や好意から発生する。
僕で言えばいくら眺めても飽きないのは彼女達。
興味が無いから見ないのが人間。
あぁ、成る程。
わかりやすい。

(じゃあ乱太郎は僕が好きなのか?)

浮かんだ疑問はほぼ確信で、僕は少し嬉しくなる。
うん、好意を持たれるのは悪くない(それは人間からも彼女達からも同じ様だ)。





そしてそれから数年後。
乱太郎は相変わらず僕を見ていた。
僕も乱太郎が僕を見ていない時乱太郎を見ていた。
しかし違っていた。

(乱太郎が作兵衛と付き合いだしたらしい)

作兵衛はずっと乱太郎を見ていた。
(乱太郎を見ていた僕はそれを知っていた)
しかし乱太郎は変わらず僕を見ていた。
(でも乱太郎は作兵衛と付き合っている)

何故?



(全部、僕の勘違い?)

胸が、凄く痛かった。
今はもう冬で、僕を理解してくれる彼女達は長い眠りについてしまった。
僕は一人だった。
今まではそれでも乱太郎の視線を感じる度に胸が温かく満たされてきたのに。
今は違う。

(痛い、悲しい、淋しい、淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい淋しい痛い痛い痛い、悲しい悲しい悲しい…つらい)

(どうして?)
そして浮かぶ一つの答え。



「僕も、乱太郎が好きだったんだろうか」



瞳から溢れた雫が冷たくなって手の平に落ちた。


+++++++
言い訳

孫兵視点でした。
対人間にはとことん無感動無関心が理想です←聞いてない
ツンデレって言うかもはやツンの部分は相手を視界に捕らえないレベル(あれ?じゃあこの話既にデレ入ってんじゃね?←聞いてn)

孫兵なりに青春していたのですが、一方的過ぎて通じ合わないまま終わってしまった恋。
初めての経験だったのでズルズル気持ちを引きずります。
そして捻くれます。
乱太郎に対してどんどんツンツンします。
そんな時にあの雪山事件です。
孫兵的には色々思う所が爆発した結果でした。

…また解説。
本当わかりづらい…orz

ここまで読んで下さって本当にありがとうございました!