永遠の誓い



※年齢操作未来捏造です。
刹那の恋の前の話です。
作兵衛と乱太郎の関係。

苦手な方はご注意下さい。

















































好きだ。
好きだ、
好きだ好きだ好きだ好きだ大好き愛してるお前しかいない。


叫ぶように、閉じ込めるように、祈るように、縋るように私を愛してくれる貴方。
そんな貴方を裏切ったのは、裏切っていたのは、私です。







「作先輩!」
「おう!乱太郎」
下山した後、私と伊賀崎先輩は本当に何もなかったかのように、淡々と演習の報告を終えた。
私は、ざわざわと落ち着かない自分の心を押し込めて、作兵衛先輩の元へと駆けて行った。
「三日目の吹雪は酷かったな」
「先輩も降りれなかったんですか!?」
「いや、俺達が下山した後にな」
「やっぱり早かったんですね」
「左門と夢前のペアには負けたけどな」
少しだけ悔しそうに言う先輩に、私はおかしくなって小さく笑った。
「今回もまた不思議なペアが多かったですね」
「だな」
キラキラと笑いながら話す作先輩が好き。
しっかり者で負けず嫌いで、それでいて世話焼き、お節介。
意外と打たれ弱くて、子供っぽい。
そんな作先輩が、大好き、だ。

私と作先輩が付き合い出したのは私が三年で作先輩が五年の頃で、今から調度一年前の事だった。



用具委員会のしんべえと喜三太と仲が良かったせいか、一年の頃から良く面倒を見て貰っていた。
時には厳しく、時には優しく…作先輩は本当に良い先輩だった。

私が実技も学科も中々成績が上がらず、酷く落ち込んでいた時…調度実家の家計も学費のせいで大分圧迫していて、学園を退学しようか…考えた時期があった。
周りには信頼できる友人も、頼りになる先生もいたのに、その時の私は何故か意地を張って誰にも相談出来ずにいた。
そんな時、私の異変にいち早く気付いてくれたのが作先輩だったのだ。

今でも覚えてる。
後ろからいきなりつかみ掛かられて、何事かと振り返った私の胸元を掴んで先輩が怒鳴ったこと。

「ぐだぐだ悩んでるなら吐き出しちまえ!」

いきなり、本当にいきなりで…思わず私は怒るでも驚くでもなく、声を上げて笑ってしまったのだ。
逆にそんな私に驚いたのは作先輩の方で「なっなんで笑うんだよ!?」なんて言うから私はますますおかしくて…。

笑いが収まってから、私はゆっくりと作先輩に悩みを打ち明けた。
溜め込んで来た不安や愚痴や悔しさや憤りを全部。
先輩は、私が話終わるまでずっと、ずっと黙って聞いていてくれた。
「…全部か?」
「え?」
「それで全部か?ちゃんと言ったか!?」
「は、はい!」
「よし」
首を傾げた私の肩を掴んで、先輩はキッと私を睨んで一言。

「そんなになるまで溜め込みすぎだ馬鹿!」

「もっと肩の力抜けよ、お前、頑張りすぎだ」と今度は呆れたように笑う先輩に、何故だか私は溢れる涙が止まらなかった。
先輩の一言は慰めるにはぶっきらぼうすぎる言葉だったけど、続けざまに言われた「頑張った」の一撃は私の強がりと意地っ張りを一気に打ち砕いた。
そのまま私は、先輩に抱き着いてわんわん泣いて…その後は、本当に不思議な事にスランプも何もいつの間にか無くなってしまった。

私の中で富松作兵衛という先輩が、とても存在を大きくした瞬間だった。

そんな先輩と付き合うきっかけになったのは、それから暫くしてからだった。





偶然、偶然だ。
でももしかしたら必然だったのかも、しれない。
夜、厠に起きた私が、ふと中庭の物音に気付いて近寄ると、作先輩が壁にもたれてうずくまっていた。
最初誰だか良くわからなかったけど、束ねられた髪の感じですぐに作先輩だと気付いた。

「…ぁ、あの、作兵衛、先輩?」
明らかに様子のおかしい先輩に、私は具合でも悪いのかと駆け寄った。
「…」
しかし先輩からの反応はなく、先輩は立てた膝に顔を埋めてゼイゼイと荒い呼吸を繰り返していた。
「っ作兵衛先輩!?」
私がその肩を揺すろうと手を伸ばす。
「…っ!」
「…っ!?」
いきなり顔を上げた先輩にその手を取られ、そのまま壁へと押し付けられた。
暗くて良く見えないが、首に当たる冷たい感触にクナイか何かを押し当てられているのだと気付く。
(…な、ど…どうし、)
恐怖を勝る驚きに声も出せずにいる私は先輩を見る。
先輩の目は焦点が合っておらず、ゼイゼイと相変わらず荒い呼吸を繰り返している。
そして私は気付いてしまった。
私を掴む先輩の手がぬるりと濡れている事に。
暗闇で黒に見えていた先輩の装束が青よりも濃い黒に所々塗り潰されていることに。
辺りに広まる、生臭い鉄の臭いに…。

「…作兵衛先輩?」
「っ!?」

もう一度名前を呼ぶと、先輩はハッとして私の首から手を引いた。
「…っハァ、ハァっ」
そのまま膝を着いて呼吸をする先輩の背をなぞりながら思う。

(…先輩は、忍務で誰か、)
撫でる背中は次第に呼吸を整えていき、逆に今度は小刻みに震え始めた。

(…なんて、声を掛けて良いかなんて、わからない)
その姿はもしかすれば二年後の自分自身かもしれない。
私は自分に出来ることが何かもわからずに、ただ無心に先輩を抱きしめた。
(きっと、私だったら、こうして欲しい…かもしれない)
今、先輩の胸は恐怖や自己嫌悪など、グルグルと黒い感情が渦巻いているかもしれないから。

「…っ…ぅ、…らん、たろ…」
「大丈夫、ですよ」
自分で言っていて、酷く滑稽な言葉だと思った。
何が大丈夫だと言うのか、一体私が先輩の何を分かっていると言うのか。
しかし、そんな言葉しか思い浮かばないのだ。
私は何度も何度も何度も何度も…それこそ一晩中、先輩の背をなぞりながら、呪文の様に「大丈夫」だと言い続けた。
そうして私は自身の勘違いに気付いた。

先輩は、決して強い人ではないのだ。
何時もは後輩や同期の先輩達の背中を叩いて慰めてくれる先輩には、同じ様に背中を押してくれる仲間は居ても、こうして弱った姿を見せれる人はいないのかもしれない。
もしかしたら、これが先輩にとって初めての一人では立ち上がる事も出来ない程の窮地なのかも、しれない。



「…私が、居ますから」
大丈夫です。
驕りも良いところだ、私が居るからなんだと言うのだ。
わかってる、わかってる、わかっている。
でもこれは今まで散々支えてくれた先輩への恩返しだと思った。

私の呟きに答える様に、ようやく先輩が口を開いた。

「…あり、がと…な」



そして私達の距離は急速に縮まる。
先輩は、私を傍に置く事を望んでくれた。

それが、全てだった。


++++++++++
言い訳

乱ちゃんと作兵衛馴れ初めです(土下座
ありきたりですみません…;;
補足としては、作兵衛の方はずっと乱太郎の事が好きでした。
正直な所乱太郎の作兵衛への気持ちは恋ではありません。
慈愛に近いです。
実は表の「冬季限定」と繋がってます。
つまりは乱太郎は本人が無自覚だっただけでずっと孫兵に片思いしてました。

…と、いう…(土下座
補足が必要とかどんだけ解りづらいんだって感じですみません…(土下座

此処まで読んで下さって本当にありがとうございました!