葛藤と踏ん切り



「庄左ヱ門ー!おいでー!」
「はい!なんでしょうか鉢屋先輩」
俺の呼び掛けに素直にやってくる庄左ヱ門の頭をひと撫でし、俺は笑顔を返す。
(うん、普通に可愛いと思う、良い後輩だ)
「悪い、特に用事は無いんだ」
遊んでるところ悪かったな、と言って不思議そうに首を傾げる庄左ヱ門を置いて俺は場所を変えた。

「しーんべぇー!ちょっと来てくれー!」
「はーい」
今度はしんべえを呼び付け、ちょこちょことやってきたその後輩の頭をまたひと撫でして、俺は笑う。
(うーん、やっぱり普通に可愛い)
「これ、皆で分けて食べてくれ」
その手に一年は組分の飴玉を乗せ、大喜びでお礼を言って駆けていく後ろ姿を見送る。

(普通だ、普通。本当にただ可愛い、と思う)
含みも当然邪まな思い等抱く事もない。

(つまり…小さければ良い訳ではない、んだよな)
はぁ、と小さく溜息をついて、俺は自身の顔に手をやり空を見上げた。
(…やっぱり、乱太郎だけが特別…なんだろうな)
そしてもう一度、溜息を付いた。



俺は、猛烈に悩んでいる。

と言うのは実は自分の性癖やら好みやら…今までまともだと信じて疑わなかったそれと、真剣に向き合わなければならない状況に陥っているからだ。
俺は今、四つ下の後輩…なんとまだ10歳の子供を…好きになってしまったようなのだ。
これがあと10年後だったなら、俺は24歳で、相手は20歳。
間違いなくセーフラインだ。
しかし今は…俺は14歳で。
相手は10歳…。
10歳だ、10歳。
どう頑張ってもアウトだ。
ムラムラしたらアウト。
手を出したら完全に犯罪者だ。

はぁああああ…。
また盛大に溜息をついて俺は空を見上げた。

猪名寺乱太郎。
それが俺が恋する愛しい子供も名前で、身長は学年でも中くらい。
声はまだ高く、不運な保健委員会だが慈愛に溢れ、厄介事吸引体質。
顔は中性的で色素の薄い髪と肌が特徴的だった。

俺だって気の迷いだと思いたい。
まだ年端も行かぬいたいけな少年に、自身が抱く邪まな感情を決して認めなくはない。
だって俺、最近毎晩のように乱太郎をピーしてピーしてピーピーピーしてピーなことばかり考えている。
何の気無しに触れたあのフワフワな髪の感触に気持ちはそわそわと落ち着かず、そして夜には結局そわそわはムラムラに変わり、悶々とした日々の繰り返しだ。

「はぁ…病気だ」
恋の病とは良く言ったものだ。
まさに今の自身の状態を表すのであればそれは病気以外の何物でもない。
乱太郎を見る度に動悸、息切れ、目眩、前屈み。
まぁ、あれだ…最後のは仕方ない、俺お年頃だし。
連日の寝不足が祟り、目の下にクマを作ってフラフラとしている俺を心配して、級友の雷蔵が声を掛けてくれたりもした。
「どうしたんだい?」と俺の肩に手を置き、心底心配そうに「悩みがあるなら話してみてよ」と優しく微笑まれ、俺はぐっと涙を堪えながら、今まで誰にも言えずに悩んでいたそれを雷蔵に打ち明けた。
俺は人生で1番「あぁ、こいつが親友でよかった」と強く思えた瞬間だった。

雷蔵に全てを打ち明けると、雷蔵は少しだけ困ったような顔をしてから、小さく頷く。
そして俺の肩に置いていた手をそっと移動させ…

「あんな小さな子に何考えてるんだ君はっ!最低だよっ!この変態っ!性犯罪者っ!!」
と一気にまくし立て俺の胸元を掴み吊し上げ、ガックンガックンと揺さ振られた。
往復ビンタと腹部に一発、回し蹴りを背中に受け、続け様にアッパーカット。
俺は思った。
友情なんてこんなもんさ。

しかしやはりこれは変態性欲なのか…と改めて突き付けられた事実に頭を垂らしながらも、俺の中では諦めよりも開き直りに近い思想に行き着いていた。

「…好きなものは好きなんだからしょうがない」
アッパーカットを受けて吹っ飛ばされ顔面からの着地で鼻血ダラダラだったが思った。
「好きなんだからしょうがないだろー!」
「開き直んな!」
「ブフッ」
叫んだ俺は雷蔵に踏み付けられ再び地面へと顔面を埋もれさせた。



こうして俺の乱太郎への半ストーカー的日常(何も言うな!自覚はあるんだ)が幕を開けた。


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言い訳

こういう…話しになる予定ではなかったんですが…あれ。
もっとこう…青春っぽい感じに←←←
本当駄文ですみません…。

此処まで読んで下さってありがとうございました!