刹那の恋



※年齢操作未来捏造です。
乱ちゃん浮気ネタです。
作兵衛が可哀相です。
苦手な方はご注意下さい。

















































真っ白な一面の雪が、
私の心を覆い尽くす。





「まずいな…」
野外演習中、今回ペアを組んだ伊賀崎先輩は小さく呟いた。
「先輩…?」
先輩と背中を合わせ、反対側を監視していた私が振り向くと、伊賀崎先輩は酷く険しい表情で私を見た。

「今夜は降りられない」
「山をですか?」
先輩は私の目を真っすぐ射抜くように見つめる。
(…やめて、欲しい)

「あぁ、吹雪が強くなってきた…日没までの時間を考えると此処を今から動くのは危険だ」
(先輩は、綺麗だ)

「ですが夜営用の薪も食料も…」
「あぁ…食料は一日二日なくても最悪何とかなるが、暖が取れないのであれば…」
先輩は頭を押さえて悩む仕種をした。
「とりあえず、動けないのであれば昨日の洞窟に戻りますか?」
「…そうしよう」
(何故か昔から、見詰められると息ができなくなる)



そして洞窟に戻ると、やはり危惧していた通りに、吹雪は更に酷くなって日没を迎えた。
私達は最小限の薪で火を起こし、二人寄り添う様に座り明日の下山について話した。

「日が昇って吹雪が落ち着き次第、ですね」
「あぁ、今は明日の朝にはこの天候が改善されるのを祈ろう」
「はい」

今回の演習は雪山での三日間のサバイバルオリエンテーションだ。
六年と四年との合同で、くじ引きで選ばれたペア同士が最低限の装備で真冬の雪山で三日間生き抜くという、酷く単純で過酷な実習だった。

(作先輩…無事下山できたのかな)
ふと思い浮かべるのは一年前から付き合いだした先輩の事だった。
(先輩は確か…庄ちゃんとペアだったはずだから、大丈夫かな)
しっかり者の二人だから、きっと大丈夫だろうと漠然と思う。
反対に、今自分達のこの状況は自身の不運の性ではないだろうかと一瞬考える。
(はぁ、だったらなんか申し訳ない)
もしそうだったら巻き込んでしまった形になる伊賀崎先輩を見る。
先輩は焚火をじっと見つめて動かない。
(…綺麗、だ)
まるで薬でもかがされたかのように頭に霞が掛かって心がふわふわとする。
伊賀崎先輩を見つめるといつもこうだ。

「…なんなんだ、お前のその目は」
焚火を見つめたまま、唐突に呟いたのは伊賀崎先輩の方だった。

「…え?」
「お前は作兵衛と付き合っているんだろう」
「え、あ、はい」
本当に、唐突に…なんだと言うのか。

「…はぁ、無意識か」
今度はため息を付かれた。
私は何かしただろうか?と疑問に思いながらも、伊賀崎先輩を見つめ続けると、先輩はいきなりこちらを向いて私の瞳を睨み付ける様に見つめた。
(あ…駄目だ、みとれる)
そう思った矢先、視界が反転した。
見つめる先には相変わらず伊賀崎先輩がいて、しかしその向こうには洞窟の天井がある。
伊賀崎先輩に、組み敷かれていた。

「…あの、先輩?」
「寒いから、暖を取る為だ」
「…意味が」
「お前は何もしなくていい、全部僕がする」
「…何を」
「もう黙れ、ただ…これは医療行為に近い、深い意味はない、生き延びる為の手段の一つだ、…お前は何も考えるな」

決して人に対して口数の多い人ではない伊賀崎先輩が、淡々と放った言葉の意味は、私が理解するのに随分と時間が掛かった。
(何をするんですが、どういう意味ですか、どうしてそんな目で私を見るのですか)

先輩の目は、今まで見た事のないくらいに妖艶な光りを宿していた。



「せ、先輩っ」
そんな様子に目を奪われているうちに、今の疑問はすぐに解消された。
先輩は私の装束を紐解いて、私の肌に口付けた。
外気に曝された肌が寒さに鳥肌を立てる。

「暴れるな」

睨み付けるようにあの目で見つめられると、抵抗も思考も呼吸さえも奪われる。





「ぅ…ぁっ…あ」
「はぁ、はぁ…くっ」

断続的に漏れる自身声に耳を塞ぎたくなる。
伊賀崎先輩いわくのこの行為は、確かに暖をとるのにはいいのかもしれない。
私達はこの真冬の山の中で、汗をかくほどに熱を与え合っていた。
熱と快楽に翻弄されて、私は伊賀崎先輩を見つめる。
いつもは結い上げられた髪が乱れて、汗で額に張り付いている。
頭の中を真っ白にするその指先に腰が震える。
この手の行為は初めてではない。
恋人がいる。
作先輩とも、した。

しかし違う、こんな…溺れるような、引きずられるような、翻弄されるばかりの情事は初めてだった。

「あ…ぁ、あ、あぁっ」
経験の浅い私でも分かる。

(伊賀崎先輩は、上手いんだ)



「はぁ、はぁ…ぁ」
小さく眉を潜めて快感を追い掛けるその表情に、またドキリと心を奪われる。

(これ、浮気…だよな)
伊賀崎先輩が言う様には割り切れない頭の片隅で思う。

(だって、私…嫌じゃない)
(むしろ、だって)



(嬉しい、なんて)

私はきつく目を閉じてその考えを掻き消した。
これは生きる為の手段の一つでしかない、私は作先輩が好きで、伊賀崎先輩はただの綺麗な先輩。
だって作先輩には私しかいないから。

だから、だから。








(これは、刹那の恋)


+++++++
言い訳

ついにやっちまった浮気ネタ。
前後の話も書きたいな!←←←
駄目ですよね…駄目だ…駄目。

本当に私の頭最低だ!
乱ちゃんに浮気なんかさせてごめんなさい!!
作兵衛ごめんなさいー!



ここまで読んで下さってありがとうございました!