癒されよう
※年齢操作未来捏造です。
一年後です。
苦手な方はご注意下さい。
「あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ー!!」
朝から鉢屋三郎は机に突っ伏して奇声を上げていた。
「なんで三郎の奴朝から死んでんの?」
それに気付いた竹谷が、鉢屋と同室の不破に尋ねれば、不破は困ったように小首を傾げ、竹谷を手招きするとそっと耳打ちする。
「卒業課題…三郎だけ皆の2.5倍で、ここんとこずっと缶詰なんだ」
こればっかりは日頃の行いだよねぇ、と不破は非情に笑う。
「でも流石に2.5倍は…」
「八、同情すると…」
「同情するなら手伝ってくれ!」
鉢屋を哀れむ竹谷を不破が止めるが、竹谷の呟きを耳聡く聞き取った鉢屋は両手を上げて振り向いた。
「悪い!俺は自分の課題でぎりぎりだ!」
謝る時も竹谷は爽やかだった。
「はんっ!端っから期待してねぇやーっだ!」
強がってはみるが鉢屋は半泣きだった。
「…はぁ…駄目だ…癒しがない…癒しが足りない…」
三郎はまたジメジメと机に向かってぶつぶつ呟き始めた。
不破と竹谷はお互いに顔を見合わせると((…ほっとこう))とにっこり笑って無言のまま席に戻る。
「あいつら…」
そんな二人をチラリと睨みながら鉢屋はまた「癒しー…癒しー…」と呪文のように呟きだす。
「そんなに癒しが欲しいのなら、この豆腐を分けてやろう!」
どこからともなく現れたのは隣のクラスの久々知兵助だった。
「いらねーよ!」
どこから沸いた!と叫ぶ鉢屋に、久々知はふっふっふ、と怪しく笑う。
「俺の癒しである豆腐を三郎に譲る。俺、癒しがない。俺の癒しを求める」
(((い組も課題多いらしいからなぁ…兵助疲れてんだなぁ…)))
三人からの哀れみの視線を物ともせずに久々知は続ける。
「…そうだ、乱太郎に会いに行こう!」
演劇めいたそぶりで久々知は立ち上がり教室の入口を指差す。
「…」
鉢屋は一瞬考えるようなそぶりを見せたが、手の平をポンと叩くとジッと久々知を見つめる。
「そうだ、乱太郎に会いに行こう!」
ガタンと立ち上がった鉢屋も教室の外を指差す。
「「そうだ!乱太郎に癒されに行こう!」」
馬鹿二人が声を合わせる。
「『そうだ京都へ行こう』みたいに言うなよ」
二人のテンションに若干引きながら竹谷が突っ込む。
「思えば課題のせいでもう二日も乱太郎に会ってない!」
三郎の一言に竹谷と不破もハッとした。
「いっ言われてみれば俺も…」
「…僕も」
「「「「そうだ、乱太郎に会いに行こう!」」」」
全員、課題で疲れていた。
その頃…。
二年に進級した乱太郎は、今年も相も変わらず保健委員で、朝1番の授業で怪我をした一年生の手当をしていた。
「はい、もう大丈夫だよ」
「猪名寺先輩!ありがとうございました!」
手当が終わると元気良くお礼を言う一年生を見送り、自身も次の授業へ向かおうと腰を上げる。
「先輩、かぁ…えへへ、まだ慣れないなぁ」
こそばゆいような胸の温かさを感じながら、乱太郎が医務室の扉に手を掛けようとすると…。
スパーン!と物凄い音を立てて扉が左右に開かれる。
「わっ!…ってわぁああっ!」
驚いた乱太郎が後ろに下がると、開いた扉から飛び込んで来た人影に押し倒される。
「い…たた」
尻餅を着いたお尻が痛い。
乱太郎が自身の腹に飛び込んで来た人物を確認しようと視線を下げると、そこには六年生になった鉢屋三郎がヒシッと乱太郎にのし掛かっていた。
「え…っと、鉢屋先輩?どうしたんですか?」
現在、鉢屋は不破に変装しているが、何故乱太郎が目の前の存在を鉢屋と認識できたかと言えば、とりあえず不破はいきなり乱太郎に抱き着いたりなどしない。
これに限る。
「ううう…」
腹に乗ったまま鉢屋はえぐえぐと泣きべそをかいているようだった。
(え…何故?)
乱太郎はそんな鉢屋にぎょっとしながらも、刺激しないよう優しく声を掛ける。
「鉢屋先輩、何かあったんですか?」
「うう、ううう…乱太郎ぉお!」
何とも情けなく名前を呼ばれる。
「らっ乱太郎に会いたくてな、はっは組の教室に行ったらなっ」
『乱太郎ー!』
四人で駆け込んだ二年は組に乱太郎の姿はなかった。
『あ、あれ?』
四人が立ち尽くすと、そこには仁王立ちで笹山兵太夫と摂津きり丸と黒木庄左ヱ門が居た。
『乱太郎になんのご用でしょうか』
『乱太郎は只今席を外しております』
『六年生は卒業課題の最中ですよね?さっさと課題片付けて卒業して下さいよ』
誰!?っと耳を疑う様な冷たい声音でにっこりと笑う三人とその後ろの七人は間違いなくは組の天使達だ。
『え…あ、の』
四人は二年生十人の普段と違いすぎるギャップに掛ける言葉が見付からない。
『って訳で…兵ちゃん害虫駆除、よろしく』
『はいよー』
お約束と言うか何と言うか、ぽかんとしている四人を気にする事なく、兵太夫が何処から伸びているのかわからない縄を引けば、四人の足元の床がストンと抜ける。
『うわぁあああああ!!』
間一髪で飛びのいた鉢屋の視線の先、他の三人が断末魔を上げて落ちて行った。
そして鉢屋は三人に心の中で(すまん!俺優秀だから…忍者は仲間より目的達成だから!)と謝罪にならない謝罪をしてその場から逃走した。
その背後からは『ちっ、一匹逃がした』とやたらと低い呟きが聞こえたらしい。
…そして、今に至る。
「…はぁ、うちの皆がご迷惑をおかけしたようで」
全体的に意味がわからない…と思うが、とりあえず乱太郎は鉢屋に謝った。
「…いや、でもむしろ乱太郎独り占めできてるから感謝してたりな」
さっきまでの怯えやぐずりは何処に行ったのか、すっかり元気になった三郎はごろんごろんとでかい猫のように乱太郎に甘えると、しっかりと癒されて帰ったのだった。
当然後日、他の三人に締め上げられる鉢屋の姿があったとかなかったとか。
終
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言い訳
久々知に「そうだ、乱太郎に会いにいこう」を言わせたくて…←←←
収集がつかなくなりました…(土下座
意味不明ですみません…
久々に五年×乱が書けて楽しかったです!
此処まで読んで下さって本当にありがとうございました!