手紙
※年齢操作未来捏造です。
苦手な方はご注意下さい。
好きだよ。
ずっと一緒だ。
愛してる。
あの日誓った言葉に嘘はない。
でも月日は俺達を大人にし…現実を教えた。
忍術学園を卒業してもう2年になる。
俺はフリーの忍者になった。
他の皆もそれぞれの城に就職したり、家業を継いだ者もいる。
あいつは…乱太郎はある城に就職した。
今では本当に一流忍者の仲間入りだ。
卒業する時、乱太郎としんべえにだけは拠点にする予定の隠れ家を教えた。
「手紙を出すから!」
そう言って、俺達は別れた。
今でも時々文が来る。
しんべえは相変わらずの厄介事に巻き込まれる度に、手紙を寄越す。
その頻度の多さに思わず笑ってしまう程だ。
手紙の内容も依頼状みたいのものが多いから、仕事ついでにしんべえとは良く会っていた。
乱太郎からは、たまに…
本当に時々だけど手紙が来た。
城のお抱え忍者になったからには、外との連絡を制限されるのは仕方ない。
でもやはり…寂しい。
学園で過ごしたあの優しく甘い日々がまるで夢だったかのようだ。
『拝啓、きり丸様
お元気ですか。
私は相変わらずです。
こちらはもう桜の蕾が開き始めました。
そちらはどうですか。
卒業してもう二年になりますね。
今ではあの頃が懐かしいです。
短いですが今回はこの辺で…
それではどうかお体にお気をつけて。』
当たり障りのない文章。
最近の手紙は、以前よりもずっと淡泊な内容になった。
最初のころは、それこそ夕飯がなんだったとか、先輩がどうだとか…くだらないけど、たくさん色々書いてくれてた。
それでも一度も、乱太郎から愚痴や弱音を綴った手紙は来たことがなかった。
乱太郎は強いから…
きっと、乱太郎を縛り付けていたのは俺なのだ。
乱太郎は俺の側にいない今の方が、自由で幸せなのかもしれない…。
そんな考えばかりが頭を過ぎり、その度何度も頭を振った。
『拝啓、乱太郎様
俺も相変わらず元気にしてるよ。
乱太郎も無理はするなよ。
こっちの桜はまだ少し開くのに時間が掛かりそうです。
俺も、学園で過ごした日々が懐かしいよ。
』
今ではまるで夢のようだ。
あんなにも近くに君がいた。
逢いたいよ、乱太郎。
逢いたい、
逢いたい…
逢いたいよ。
お前がいないと、駄目なんだ。
どうか、どうか一目でも…
綴りたくても、自分ばかりがこんな我が儘を書いてはいけないと、何度も何度も手紙を書き直す。
そして、出せない俺の本音は机の奥にひたすら増えていった。
「乱太郎…逢いたい、よ…」
口に出せばもう涙が止まらない。
君に触れたくて、君を呼びたくて、一人体を抱きしめる。
それでも時間は止まらず流れ、また乱太郎から手紙が届いた。
『拝啓、きり丸様
お元気ですか。
危ない仕事はがり請け負ってはいませんか。
もうすっかり夏ですね、蝉の声を聞くと…』
乱太郎は決して弱音を吐かない。
優しい奴だから、心配させたくないんだ…たぶん。
今までの手紙もきっとそうで…
『最近、きり丸と過ごした日々のことばかりを思い出します。
もう、ずいぶん経ちますね…
きり丸に 逢いたい、です。
』
何かに濡れて滲んだ最後の一文に、俺は手紙をにぎりしめ家を飛び出した。
…俺は馬鹿だ。
乱太郎は就職したのだから、自由に外へ出ることなんてできないと知っていたのに。
乱太郎は強いから、弱音を吐きたくてもはけないのだと知っていたのに。
逢いたいのは自分だけだと、好きなのは自分ばかりだと…
逢いたい、逢いたいよ。
俺は夜露に濡れる獣道をひたすら走った。
コンコン…
乱太郎の自室の扉を叩く音が響く。
「…どちら、様?」
「…」
こんな夜更けに乱太郎を訪ねるものはない。
沈黙に僅かな緊張と殺気を持ってクナイを握る。
ススーっとゆっくり引き戸が開けば…
「逢いに、きちゃった…」
泣きそうな笑顔で、そこにはきり丸が立っていた。
終
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おまけのような…
急いできり丸を自室へ隠した乱太郎にきり丸はぎゅーっと抱き着いた。
「きっきりちゃ…!」
「乱太郎の馬鹿、もっと早く書けよ…逢いたいって」
「は!?どの口が…ってかきりちゃんどっから入って…」
「ちょっと」
「ちょっとって…もう」
「乱太郎が悪い」
「だから何それ、てかお互い様じゃ…」
「じゃあ今でも今までも好きなんだから、逢いたいのは当たり前だし逢いにきちゃ駄目なのかよ」
ぶつぶつと乱太郎の胸に頭をくっつけて拗ねたようにきり丸が呟く。
「そりゃあ…そうだけど、」
「ど?」
「はいはい、私が悪かったですよ」
「うん、乱ちゃんちゅー」
「…はいはい」
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言い訳
結局お互い遠慮しあって、逢いたいのに逢いたいと言えなかった二人…なんて。
はい、妄想です。
乱太郎もきり丸と同じような事を考えてもやもやしていたんだと思います。
もやっぷる(黙れ
うちの受は漢前推奨なので必然的に攻が乙女でヘタレで甘えたになります(今更
すみません…orz
ここまで読んで下さってありがとうございました!