流れ弾に当たる



※不能じゃない次×乱です。
「酒の勢いで」から若干続いてます。
未来捏造、うぶじゃない乱太郎が苦手な方はご注意下さい。


















































それなりに経験はあった。
授業や実習、個人的な事柄も含めて。
しかし今までのそれは全て俺が好き勝手して良くなって、相手も勝手に良くなって、ほぼお互いに一方的な行為でしかなかった。
快感もあったし、個人的な方にはもちろん気持ちだって伴ってた。

しかし、乱太郎とのそれとは全然次元が違ったのだ。



断続的に続くか細い喘ぎ声(あの日からずっと、耳について離れない)。
腰が抜ける程の舌使い(誰に仕込まれたんだと問いただしたくなるくらい)。
ぐちゅぐちゅと感触まで思い出せる湿ったそこ(潤滑油だとはわかっているが、まるで女のそれのようで)。
絡み付いて搾り取ろうとでもするように狭くて熱いその内部(女を抱いてごまかすなんて到底出来ない程の)。



「あー…やばい、やりてぇ」
「馬鹿かお前は!」
そう呟いた俺をいきなり怒鳴り付けたのは同級生の富松作兵衛だった。
「おまっ!お前はいきなり何を言い出すんだ!」
「え、だからやりてぇなぁって」
「馬鹿!馬鹿!馬鹿!二回言わせる為に言ったんじゃねーよ!馬っ鹿!」
俺も大概だとは思うが作兵衛は口が悪いと思う。
「俺が言いたいのは何昼間っから卑猥なこと言ってんだよ馬鹿!って意味だよ!この歩く猥褻物!」
作兵衛は怒鳴ってるからわからないかも知れないがそんな大声で卑猥だの猥褻だの言ってる作兵衛の方が恥ずかしい。
「はぁ?作兵衛意味がわからん」
あえて言うなら存在自体が。

俺は後ろに付いていた手を離し草むらに仰向けに横になった。

「ったく…お前みたいな馬鹿と話してると疲れる」
お互い様だろー?と思うがそれこそ本当にお互い様で、今此処にはいない左門を含めた俺達はなんだかんだと六年間こうしてつるみ続けている。

「で、いきなりどうしたんだよ」
お前彼女いたじゃん。と言いながら作兵衛も隣に横になった。
「あー…多分別れた」
「多分ってなんだよ」
「わからん、ここ二週間会ってねぇ」
「お前…相変わらず最低だな」
来る者拒まず去る者追わずがモットーの俺は今まで付き合った女達とも自然消滅というパターンが多かった。
「んー…そうか?」
「彼女…お前から来てくれんの待ってんじゃねぇの?」
「でももう顔忘れた」
「お前!本当最低!」
作兵衛は信じらんねぇ!と言う顔で俺を見る。
俺はと言えば本当に本気でこの前まで付き合ってた女のことなんてどうでもよくて、自身の初めてとも言えるこの恋のトキメキ(なんだろうか)を友人:富田作兵衛に相談しようかどうかを悩んでいた。
まぁ悩むと言っても一瞬だが。

「でも俺今、恋してるかもしんない」
「はぁ!?」
口に出してみれはそれは想像以上に薄っぺらい言葉で、しかしそれを聞いた作兵衛の反応は笑えるほど大袈裟だ。

「この前体育と保健の上級生で呑んだんだけどな、」
「…へぇ」
(なんだ?作兵衛が若干機嫌悪い。仲間外れだから?んーそれはないな)
少しだけトーンの下がった作兵衛に首を傾げたが、傾げただけだった。

「んで、俺乱太郎とやっちゃった」
「はぁあああ!?」
今度のリアクションは本当に大袈裟で、作兵衛は文字通り跳ね起きた。

「そしたらこれがまた最高でさ、俺もう乱太郎の事しか考えられねぇの。これって恋じゃね?」
良く短所なのか長所なのか分からないと言われるが俺はそんな内容をただ淡々と作兵衛に話した。

「…それ、まさか無理矢理じゃねぇだろうな」
異変に気が付いたのは地の底からはい出るような作兵衛の声を聞いた瞬間だった。

「いや?間違いなく合意」
「………………なんだよ、それ」
俺がさらりと事実を告げると、作兵衛は握り締めた拳のやりどころが無いのか、小さく肩を震わせながら俯いた。
え?なんで?作兵衛どうした?

「どうした?」
俺が下から覗き込めば、作兵衛は今まで見た事もないくらい怒った顔をしている。

(ん?これはもしかして…)
体育と保健での酒盛りに、不機嫌になる作兵衛。
俺と乱太郎がヤった事実に明らかに怒ってる作兵衛。
しかも合意だと言う事に物凄いショックを受けている。

結論、作兵衛俺に惚れてる?



「ごめんな、作兵衛…俺、ずっとお前の気持ち知らなくて…」
「べっ別に俺はっ!」
俺が珍しくしんみりと作兵衛に謝ると、作兵衛は「お前に謝られる筋合いねぇよ!」と涙目で俺を見る。
「だけどごめん…俺今乱太郎に恋してるっぽいからお前の気持ちには答えられない」
どんなに作兵衛に涙目で見つめられても、残念ながら全く全然ムラムラしない。
「何薄ら寒い勘違いしてんだよ馬鹿っ!俺が好きなのは乱太郎だ!」
「え」
「あ」

…。
…。
どうやら作兵衛は俺のライバルだったらしい。
お互い次の言葉が見付からなくて無言で気まずい雰囲気が流れる中、唐突に後ろの茂みがガサッと音を立てる。

「だっ誰だ!」
「あ…えーっと」
咄嗟に反応したのは作兵衛で、茂みから両手を上げて降参ポーズで現れたのは乱太郎だった。

「なっ!な!なっ!なな!」
もはや作兵衛の声は言葉になっていなかった。
「ちょっと…その、立ち聞きするつもりとかは無かったんですが…」
つうか良く乱太郎は作兵衛の言ってることがわかるな。
俺、妬いちゃうぞ。

「いいいっいっ!いっ!」
「作兵衛なんつってんのかわかんねぇ」
「えっと…実はお二人が来る前から反対側で昼寝してまして…」
申し訳なさそうに言う乱太郎はやっぱり気のせいではなく可愛い。
うん、やっぱり俺乱太郎に恋してる。

「どどっ!どっ!ど!どど!」
「えっと…その、富松先輩の『俺が好きなのは』の辺りから…」
「ギャアアアアアアアアアアッッ!!!!」
作兵衛は自身の無意識の告白を聞かれたのがショック過ぎたのか真っ赤になって絶叫しながら草むらに倒れてどんもりうっている。
って言うかあれだけ作兵衛が騒いでたのに、前半は全然起きなかったって逆に乱太郎すげぇよな。

「あの、その富松先輩…私はその、まだ誰か特別な一人をつくる気はなくて…その…ごめんなさい」
「あっあやまんなぁあああああっ!!!!」

可哀相な作兵衛。
まだまともに告白したわけでもないのにごめんなさい。
なんて可哀相な作兵衛。

「どんまい」
とりあえず慰めようと作兵衛の肩をポンと叩いたら、作兵衛は何も言わずに俯いた。
「お…」
「「お?」」
「お前のせいだぁああああああああああ!!」

作兵衛くん、それは八つ当たりだろう。




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言い訳

え?なにこのグダクダ←いつもだよ!(土下座

微妙にスレ乱の「酒の勢いで」から続いてます(土下座
思いっきり可哀相な作兵衛。
私すみません三之助大好きみたいです←知ってる。
というか次乱にも富乱にもなってなくてすみません…(土下座

此処まで読んで下さって本当に本当にありがとうございました!!