仕事の後で
「はぁー…今日も疲れた」
深夜、厠に起きた乱太郎は十歳児にはおよそ似合わない台詞を吐いて用を足した。
キキッと厠の扉を開きちょいっと外に出る。
(手、洗わないと)
水場に向かって歩く足は睡魔に負けかけてふらふらしている。
バシャバシャ…
ポタポタと滴る水滴を手ぬぐいで拭き取り、一年長屋の自室に戻ろうとすると不意に声を掛けられた。
「やぁ、こんばんは」
屋根の上から手を振りながら、逆光で顔は見えないが、おそらくはにっこりと笑っているであろう青年がそこにいた。
「…利吉、さん?」
睡魔と逆光に阻まれ顔の識別は困難だが、もう何度と関わった事があったので、乱太郎には相手が利吉であることはすぐに分かった。
「今日はお疲れ様、乱太郎くんが囮をしてくれたお陰で大分楽に仕事が出来たよ」
ひょいっと屋根の上から乱太郎の目の前に着地したのは、乱太郎が思った通り山田利吉であった。
「はは…どうも」
そのお陰でこちらはいつも以上にクタクタだ。
「眠っていたら寝顔を見て帰ろうと思っていたんだけど、手間が省けたね」
シュタッと屋根から飛び降りた利吉に、乱太郎は微かな違和感を覚える。
(あれ、小松田さんがこない)
「…彼は調度良く実家に帰っているらしくてね、」
乱太郎が首を傾げたのを見て、利吉は乱太郎の心を読んだ様に某事務員の不在を告げた。
「…ぁあ」
納得したように乱太郎が掌を打つが、もう既に頭は半分眠っているようだ。
「はは…だいぶ眠そうだね、まぁ…無理も無いか」
苦笑する利吉は学園の廊下に腰を下ろすと、乱太郎を手招いた。
「…?」
用が無いのなら早く布団で眠りたいのになぁ…と思いながらも乱太郎は利吉の方へ律義に寄って行ってしまう。
目の前にやってきた乱太郎をひょいと膝の上に抱き上げ、利吉はぎゅーと乱太郎を抱きしめる。
「…利吉、さん?」
「ごめんね、眠いよね…でも少しだけこうさせておくれ」
乱太郎から利吉の顔は見えないが、どうやら利吉も大分疲れているようで、心なしか声に元気が無い。
「…利吉さんも、お疲れ様、でした」
寝ぼけ半分に、ふふふ…と笑いながら乱太郎はギュッと利吉の手の甲を握った。
「ありがとう、嫌じゃなかったらこのまま寝てしまってもいいよ?ちゃんと部屋まで送るから」
「…はぁー、い…お休み、なさ、い…」
利吉がそう言うと、乱太郎はふっと力が抜けて、二秒と待たずに夢の中へと旅立ってしまった。
「…」
そんな乱太郎をクスリと微笑み見守ると、利吉はまた乱太郎をギュッと抱きしめた。
(あたたかい)
(同じ鼓動)
(乱太郎の匂い、甘い)
小さな子供を抱きしめ、大きく息を吸い、また大きく息を吐いた。
(…愛おしい)
(父上にバレたらぶっ飛ばされるかなぁ…)
スヤスヤと眠る乱太郎を見つめて、利吉は困ったように笑った。
終
+++++++++
言い訳
へっ変質者ですー!←すみません
真夜中に児童を膝に乗っけて寝かし付けてにやけてる兄ちゃんって考えたら本当に下手したら警察呼ばれますよね←←←
利吉さんはまだやましい気持ちを抱く前なんです←まだってなんだ
仕事で疲れて癒されに来ているだけなんです。
意味不明ですみません…(土下座
此処まで読んで下さってありがとうございました!