幸福論
※年齢操作未来捏造です。
苦手な方はご注意下さい。
どうか、どうか。
いつまでも一緒に。
「なぁ、乱太郎」
来月に卒業を控えた満月の夜。
二人で一つの布団に横になり、きり丸は乱太郎の腰に後ろから抱き着き、その背にピッタリと頬を寄せて呟いた。
「なーに、きりちゃん」
パラパラと医学書に目を通しながら乱太郎が優しく聞き返す。
「俺達もう、卒業だろ?」
「うん、そうだねぇ」
「俺はフリーで働くけど、乱太郎は就職決まってるじゃん」
「そうだねぇ」
「中々逢えなく、なる…よな?」
「…そうだねぇ」
腰に巻き付くきり丸の腕がギューっと力を込める。
「乱太郎…もし、もしな?」
「うん、もし?」
「俺に何か、」
「もしでも駄目」
「…乱ちゃん、とりあえず最後まで言わせてよ」
「…どうぞ」
きり丸の言わんとする内容に即行の否定をする乱太郎に、思わずきり丸は笑ってしまう。
つられて乱太郎もクスクスと笑う。
「俺に何かあったら、悲しんでくれればいいから」
「…?きりちゃんに何かあったら悲しいのは当たり前でしょ?」
パタンと本を閉じ、きり丸の方を向こうともぞもぞ動く乱太郎を助け、二人は向き合い額をこつんとくっつける。
「だから、悲しんでくれるだけにしてくれって意味」
「?」
「仇討ちとかさ、未亡人みたいに俺への気持ちをずっと引きずったりとかさ…そういうのは禁止ってこと」
ようやくきり丸の言いたい事の意味が分かり、乱太郎は困ったように笑う。
「…うーん、どうして?」
そして肯定も否定もせずに、乱太郎は問う。
「乱太郎には幸せになって欲しいから」
「また勝手な…」
きり丸の告げる理由に乱太郎はため息を付き、きり丸の瞳をじっと見据える。
「きり丸、我が儘言わないでよ」
「…なんで我が儘なんだよ」
悲しそうに揺れる乱太郎の瞳に、きり丸は自身が映りこんでいるのに気付く。
「きり丸がいないのに幸せになれるわけ、ないじゃない」
「…でも」
「でもじゃなくて、」
乱太郎はきり丸の頬へ両手で触れるとそのままきり丸へ口付けた。
口付けたまま目を開けば、唖然としているきり丸と目が合う。
きり丸から口付けられることは多いが、乱太郎から口付けることはほとんどなかったからだ。
「じゃあ私からもお願い」
乱太郎は唇が触れ合うままに小さく呟く。
「私を置いて逝くような事には決してならないで?」
「…それって難しくない?俺達の仕事柄」
「じゃあ私も約束できないね」
にっこり笑う乱太郎にきり丸はため息を付く。
本当の事を言えば、きり丸だって自分にもし何かあったとして、乱太郎が自分を忘れて自分以外の誰かに惹かれて、そいつに笑いかけたり触れられたりなんて、考えるのも嫌だった。
でも今のこの想いで乱太郎を縛ってはいけないとも思っていた。
「じゃあどうすればいいんだよ」
「うーん…」
「死ぬなってのは無理な話だし、忘れるのもできないんじゃ、絶対に幸せになんて…」
「きり丸に何かあったら、私もついていくよ」
「…!」
さらりと告げる乱太郎にきり丸は目を見開く。
「出来れば死ぬ時はきり丸より先に、きり丸の側で…更に我が儘を言えばきり丸に殺されるのが良い…けど、」
それこそ難しいよねぇ…と乱太郎は悲しそうに笑う。
「きり丸は『もし』なんて言うけど、私はね…」
きり丸の頭を両手で包むように抱きしめて、乱太郎は続ける。
「そんなもしもの世界には、一秒だっていたくないの」
「乱…」
「先のことなんてわからないから、どうなるかわからないけど…私はきり丸のいる世界でしか生きていたくない」
何言ってんだよ、そんなの駄目だ。
そう…、言いたいのにきり丸は何も言えなかった。
乱太郎に頭を抱きしめられたまま、鼻先が乱太郎の胸に当たっている。
何よりも安心する、乱太郎の匂いがする。
確かに、それは…
幸せかもしれない。
駄目だと思う頭の片隅で理性が麻痺していくように、じわじわとその思考に侵されていく。
乱太郎を置いて逝かずに、乱太郎の最期の瞬間傍らに自分がいる。
更には誰かに奪われるのではなく、乱太郎から貰いうけるのだ。
そして乱太郎の隣で自分も逝くのだ。
乱太郎がそれを本当に幸せだと言うのなら、それはきっと自分も1番幸せな最期だ。
幸せな、最期だ。
何故だか涙が溢れた。
それに気付いた乱太郎が、優しくきり丸の頭を撫でる。
「乱太郎…愛してる…」
くぐもったきり丸の声が聞こえる。
「私も、愛してるよ…」
乱太郎も答える。
終
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言い訳
びっくりするくらい不完全燃焼ですね!
本当表現力なくてすみません!泣
目の前に迫る現実と、想定出来ない未来に不安を覚えて、実現するかどうかわからない理想のラストを想像して、お互いの想いが通じ合っていることに、またつかの間の幸せに浸る…。
結局何も解決していないんですが、その時はそれで幸せだと思えた←みたいな話です(説明つけてもわかりづらい
ここまで読んで下さってありがとうございました!