はじまり。



ずっと話してみたいとは思ってたんだ。



「あれ?君…乱太郎、くん?」
「は…はい、そうですが」
突然名前を呼ばれ、困惑気味に返事をする乱太郎に竹谷はニカッと笑いかけた。

「えっと、竹谷八左エ門先輩…ですよね?」
ニコッと笑って乱太郎が小首を傾げる。

「あったりー!」
わしゃわしゃと乱太郎の頭を撫でると、乱太郎が擽ったそうに首を竦めた。

「いきなり悪かったな、いやぁ三郎達から話しに聞いてたもんだから、思わず話し掛けてしまったんだ」
少し落ち着いた所で、竹谷が乱太郎にそう言った。

「鉢屋先輩から?」
「うん!あいつらよく乱太郎の所に来るだろ?」
早速呼び捨てになっているが、乱太郎は気にしない。

「はい!良く遊んで頂いてます!」
えへへと笑う乱太郎に、竹谷もつられてえへへと笑う。
見ている方が恥ずかしくなるタイプの二人だ。

「それはそうとこんな所で何してたんだ?」
「保健委員会の薬草摘みです!竹谷先輩は?」
「そか、俺も委員会なんだけど…孫兵のジュンコがまた逃げ出したんだ」
あっはっはと少し遠くを見ながら竹谷が笑う。

「あぁ…」
またですか…と乱太郎も少し困ったように笑った。

「えと!噛まれたらすぐに言ってくださいね!伊作先輩から毒消し貰ったんです!」
気を取り直したように乱太郎が言えば、竹谷は少し首を傾げる。

「保健委員会って毒消しまで常備してるのか?」
「いえ!薬草採りをすると必ず誰かは毒虫か何かに刺されるんです!」
はいっ!と手を挙げて元気に答える乱太郎に、竹谷は言葉を無くす。
不運委員会の名は伊達じゃない。

「悪い…生物委員会が予算を取れないばっかりに…」
すまん…と目頭を押さえて保健委員会に同情する竹谷に、慌てて乱太郎が言った。

「せっ生物委員会のせいじゃないですよ!その、あの…いつも偶然ですから…」
その偶然に遭遇する確率が若干高いだけである!というのは保健委員会委員長善法寺の持論である。
「だから、竹谷先輩のせいじゃないです」
ニコッと笑って乱太郎が竹谷の両手を掴む。
一年生に気を遣われてしまった…と思いつつ、竹谷が顔を上げると満面の笑みの乱太郎がいた。

「…っ!」
とたんにドキドキしだす左胸に気付き、何とか落ち着こうと視線を逸らす竹谷だが、生憎握られた両手から体温がどんどん上がっていくのがわかる。

(うわー…なんか、三郎達の気持ちわかった)
ヤバイ、これはクる…と尚も落ち着かない竹谷に、乱太郎が首を傾げる。
「竹谷先輩?」
「あっ!そうだ名前っ!」
「っ!」
突然正面に視線を戻し大声を上げた竹谷に、一瞬びくりとして乱太郎は瞬きしながら竹谷を見上げた。

「俺の名前!八で良いから」
驚いている乱太郎に構わずに竹谷が続けた。
「は…はぁ…」
「三郎のこと鉢屋って読んでるんだろ?」
「はい、」
「竹谷だと時々ごっちゃにされるんだ」
「はぁ…」
「だから俺の事は名前で読んでよ」
「はっはい」

眩しいくらいの笑顔になって、竹谷が握られた右手を離し、もう一度乱太郎の頭を撫でる。
それから少しだけ照れ臭そうに自身の鼻の頭をひと撫ですると、竹谷は乱太郎から手を離し、優しく笑う。


「仕事邪魔して悪かったな」
「いえそんな!」
慌てる乱太郎に、ますます笑みを深める。

「じゃ、刺されないように気をつけてな!」
「はっ…八左エ門先輩、も」
照れながら早速名前で呼んでくれた乱太郎を、竹谷は思わず抱きしめたくなるが、その衝動はなんとか堪える。

「また今度時間ある時話そうな!」
「はいっ!」



小走りで乱太郎から離れて行きながら、竹谷は左胸を押さえて笑った。
「ヤバイ、心臓早い」

唐突に呼び名の話題を出したのは、何か話題を変えなければ気恥ずかしさに堪えられなかった為だったのだが、いざ名前で呼ばれたら、その前の比ではない程にドキドキしている自分に驚いていた。

「ほんと…ヤバイ」
ヤバイと言いつつ緩みきった頬は戻らない。

(ハマりそう!!!)





後日、他の五年の前で一人名前で呼ばれた竹谷を、他の三人が緊急ミーティングと称して引きずって行ったのは…言うまでもない。


――――――――――
言い訳

秋海様に捧げさせて頂いた竹乱です!(土下座
すすすすみませんでした…←早速すみません(土下座
カップリング未満の駄文で申し訳ありません(>_<)っっ
こここんな竹乱で宜しければどうか受け取って下さい…っっ

ちなみに鉢屋と竹谷を呼び間違えるのは私です←

この度は相互リンク本当にありがとうございました!!
どうかお体にお気を付けてこれからも運営頑張って下さい(^-^)!!