柄じゃないのに
※卒業後です。
未来捏造、うぶじゃない乱太郎が苦手な方はご注意下さい。
まるで君は蝶のようだね。
捕まえて閉じ込めてどんなに私の傍に置いたとしても、決して私の物にはなってくれない。
そんな気がする、気がするだけ。
でも多分間違ってない。
「乱太郎くん、帰るの?」
情事の後、暫くは身体を休めていたがいつの間にかせっせと身支度を整える乱太郎くんに、私は声を掛けその上着の袖を咄嗟に掴む。
「流石に、朝まで此処にいる訳には…」
ここはタソガレドキ軍忍衆寮の、忍頭の自室であった。
ニコリと微笑む乱太郎くんの表情は酷く穏やかで、先程までの私との獣様な激しい情交の名残など微塵も感じさせない。
「…うん、そーだね」
掴んでいた着物の袖をそっと離し、私もニコリと右目だけで微笑む。
確かに彼の言う通りで、明日の朝まで彼がこの部屋に居て困るのは私の方で、分かってはいるのだが名残惜しく感じて仕舞うのは…まずいなぁ、と思う。
彼の先輩に当たる保健委員長に借りを作ってから、あの学園との関係は腐れ縁のようにズルズルと続き、事あるごとに事件の中心となる乱太郎くんとの繋がりが深くなるのは必然とも言えた。
乱太郎くんが学園を卒業し、フリーの忍者として働き始めたと聞いた時にも、真っ先にこの城へのスカウトを試みたがあっさりと却下されてしまった。
しかし彼は相変わらずの柔らかい笑顔で『スカウトは請けられませんが、包帯を変えたくなった時には呼んで下さい』と言った。
その一言に(あぁまだこの子との繋がりは続いて行くのか…)と、安堵する自分が居た事に驚いたのを覚えている。
こんなふうに床を共にしていても、彼と私の関係は恋人同士の様な甘い物では当然無い。
彼の申し出に甘えて彼に逢いたくなった時にだけ「包帯を変えて欲しい」と理由付けて呼び出し、何度目かの呼び出しの時に、ふざけて仕掛けてみたら彼が抵抗しなかったというだけの話。
それからずっと…これまたズルズルと続いているだけの関係だった。
拒まれなかったと言うだけで、相手に執着しているのは私だけで、乱太郎くんにとっては深い意味はなさそうなのが少し寂しい。
はは…寂しいだってさ。自分で言っていて鳥肌が立つ。
(あーぁ、若いっていいなぁ)
行為に性欲処理意外の意味を求める自分が酷く女々しくて滑稽だ。
昔はもう少し割り切れてたはずなのに。
そんな事を思っているうちに、乱太郎くんは身支度を整え終えており、私の顔をじっと覗き込んでいた。
「ん?なぁーに?」
私が聞けば乱太郎くんは「いいえ」と答え、「それでは」と踵を返す。
「ばいばーい」
ひらひらと手を振り見送りながら思う。
(寂しい、なぁ)
いっそ彼を捕まえて暗い牢にでも監禁して私だけのモノにできたらいいのに。
最近の私は若い頃に割り切れていた筈の事が割り切れずにいる、そしてあの頃には感じたこともない激しい燃えるような衝動に駆られることが増えた。
主には乱太郎くんの事だけど。
もしくは私が彼の所有物だったらよかったのに。
彼が望むのならば私は喜んでこの身や命を捧げるのに。
でもそんなことを望まれる日が来る事がないのは、彼の性格を思えば明白で、なんだか虚しい気持ちになる。
「次に逢えるのはいつになるかねぇ」
キセルをくわえ、火を付ける。
何時になるのか、もしかしたらもう逢えない可能性も常々ある。
わかってはいても、次回を指折り数え待つ辺り、私はまるで初恋を覚えたばかりの子娘のようだ(あぁ、情けない)。
(そう言えば行為の最中に睦言を囁いた事はなかったなぁ)
ふとそんな事を思い、次があれば<愛しているよ>とでも言ってみようかと考える。
彼はどんな反応をするだろう。
多分困ったように笑いながら<ありがとうございます>と言うのだろう。
(馬鹿馬鹿しい)
ふー…と煙を吐き出し、キセルを片すと私は仰向けに体勢を移す。
二周りも歳の離れた子供になんて様だ。
(でも、好きなんだよなぁ)
クツクツと私は一人声を漏らして笑い、瞳を閉じる。
夜明けまではまだ時間がある。
彼の夢でも見れたら良いなぁ。
終
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言い訳
雑乱!←に、なっていなくてすみません…
ほぼ完全なる雑→乱
駄目な大人な雑渡さんが大好きです!←決め付けるな
遅れて来た純愛です←既に爛れた関係ですが(土下座
此処まで読んで下さってありがとうございました!