嘘つき
※年齢操作微パラレルです。
苦手な方はご注意下さい。
六年鉢屋×五年乱太郎→卒業生です。
君は嘘をつく
優しく甘美で
残酷な嘘を…
草木も眠る丑三つ時。
俺達は布団の上でろくな会話もせずにただ一緒に横になっていた。
隣に寝転がる乱太郎は見えないはずの引き戸の向こうずっとを眺めている。
そうやって…先程から乱太郎は一度も俺の方を見ようとしない。
気のせいか、俺の勘違いかも知れない。
でも…何と無くそう思った。
昼間、同室の不破が学園長のお使いで、今夜は帰ってこないと乱太郎に伝えると、勉強を教わることを口実に乱太郎は俺の部屋に泊まり来た。
当初の予定通り課題を済ませ俺達はいつものように求め合った。
俺は乱太郎を乱太郎は俺を、お互いを求めて深く交わった後、やはりいつもように俺達は何を話すでもなくこうして布団に雑魚寝するのだ。
こんな関係が一年前からずっと続いていた。
誰にも本当の姿を晒さず飄々と他人の姿で生きる、変わり者の俺。
そんな俺に偏見も持たず、誰にでも分け隔て無く全てをさらけ出し、素直で優しい…到底忍者には向かない一つ下の後輩。
俺は乱太郎の事が好きだった。
だからこれは願ったりな関係なはずだった。
でも…
「らーんたろ」
「…はーい」
気の抜けた生返事で、やはり俺の方を見ることもなく乱太郎は小さく返した。
「さっきから何見てるんだ」
「んー…引き戸…です」
ふざけた答え。
見えない表情。
でもこういう時お前が何を…誰を想っているかだけは、考えなくとも分かっている。
「なぁ乱太郎ー…」
「はーい」
俺は体をずらして乱太郎の背にピッタリと寄り添い、右腕だけを彼の肩から前に回した。
「あの人のこと、考えてる?」
少しだけ乱太郎が驚いたように身じろいだ。
俺だってこんな分かりきったこと聞きたくねぇよ。
「…別に、誰のことも考えてないですよ」
でも、確認せずにもいられない。
一拍遅れた曖昧な返答。
例え嘘だと分かっていても、お前の口から否定を聞きたい。
「ふーん…」
虚しくなるだけだと、分かってはいるけど。
俺は回した腕に少しだけ力を込め、重心を乱太郎に掛けてそのまま彼のうなじに顔を埋める。
「っ…鉢屋先輩!」
「だって乱太郎、さっきからこっち見てくんないじゃん」
そう言いながら優しく噛んだその場所を、今度はゆっくり舐めてみた。
「ぁ…っ、…はーちーやーせーんーぱーい」
期待通り乱太郎は小さな声を上げて、緩慢な仕草で俺の方へ顔を向けようと俺の腕を掴んだ。
呆れたように名前を呼ばれて、俺は少しほっとした。
「んー?」
「先輩が寄り掛かってるからそっち向けません」
「あぁ…悪い」
俺は乱太郎から少しだけ離れて、こちらを向こうともぞもぞ動く彼を助けるようにもう一度、今度は正面から肩を引き寄せ抱きしめた。
「鉢屋先輩苦しい」
「うん」
「いやうんじゃなくて」
「…離したくない」
「先輩?」
無意識に、乱太郎を抱きしめる腕に力を込めた。
お前は…
こんなに近くにいるのに
今も俺の腕の中にいるのに
いつも寒くて虚しくて苦しくて…
本当、どうにかなりそうだ。
俺の言葉に怪訝な顔をして見上げてくる乱太郎に、触れるだけの口付けをした。
「好きだ、乱太郎」
顔を見せたくなくて、もう一度強く抱きしめたら、乱太郎はもう諦めたのか俺の胸に頭を預けたまま…
「私も、鉢屋先輩が好きです」
…嘘ツキ。
心の中だけで毒づいて、何も言わずに俺は目を閉じた。
乱太郎は今、きっと笑ってる。
幸せそうなふりをして、そのくせ瞳には渇いた悲しみを隠せずに…
そうきっと…心の中ではあの人を想いながら。
乱太郎が誰を想っていても、
乱太郎が俺に誰を重ねていても、
俺の気持ちは変わらない、
俺の願いも変わらない。
そしてそれは…
きっと一生叶わない。
だから…
せめて今だけでも、俺の腕の中にいるお前の温もりだけを感じていたい。
例え嘘でも、お前の言葉に酔っていたい。
君は嘘つき。
あぁどうか…
優しく甘美で、残酷なその嘘を…
ずっとこれからも
俺だけに囁いて…
終
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別サイトの別ジャンルで書いた話のデータが残っていたので丸々文章リメイクしてしまいました。
嘘つき鉢屋は嘘に敏感だと思います。
てか乱ちゃんスレててすみません…。
うーん…微妙ですみません。
ここまで読んで下さってありがとうございました!