休日。



※年齢操作現代パロディーです。
苦手な方はご注意下さい。






















































side.R



「うーん…お昼どうしよう」
週末、私は自室のベットに寝転がりポツリと呟く。

一人暮らしを始めてからもう9年近い。
なので料理を始め家事全般はそれなりにこなしている。
ご飯を作るなど造作もないことだが、自分一人の為だけに何かを作るというのは相当やる気がないと中々実行には移せないものだ。

「うーん…」
(作る…のは面倒、かな…でもインスタントって気分じゃないし)
いっそ食べない…のはやっぱり良くないか…と、私がベットから起き上がるのとほぼ同時に。


ピンポーン


呼び鈴がなった。





「おはようございます!」

覗き穴から確認してみれは、そこに立っていたのは現在赴任中の学校の生徒で、私は何事かと驚いて扉を開いた。
「おはようございます、どうしたの?三郎くん」
(っていうか何で家知ってるの?)
と思わなくもないが、そう言えば前の学校でもいつの間にか私の家は生徒達にはばれていて、大分頻繁に遊びに来られていた事を思い出す。

「遊びに来ました」
ニヤリと笑う彼の笑顔は挑戦的で、一卵性の双子だと聞く雷蔵の柔らかな笑みとは大分印象が違う。

「遊びに…って、ゲームとか何にもないよ?」
実家にはそれなりに揃っているが最近はめっきり触っていないテレビゲームを思い出す。

「…うーん、言い直します、先生を独り占めしに来ました」
今度はニッコリと、それはそれは晴れやかに…しかし反って嘘臭い笑顔で彼は言う。

「はは、なにそれ」
意味は良くわからないが、彼の普段の行動も大分意味不明なので大して気にしない。

「上がって良いですか?」
保健医とはいい、自分は立場的には教師な訳で安易に生徒を家に上げていいものか一瞬悩むが、まぁ今更かな…とも思い了承してしまう。

「うーん…どうぞ」
何もないけど散らかってるよ?とだけ言っておく。

「おじゃましまーす」
心なしかウキウキとした様子で三郎は部屋へと足を進める。
「お昼は食べた?」
「まだです、腹は減ってます」
あ、でもお構いないなく!ビシッと片手を上げる彼に苦笑しながら「私もまだなんだ」と伝えキッチンへと向かう。

「とりあえずジュース飲んでて、うーん…本しかないけど、興味があればご自由に」
ニコリと笑って私が言うと、三郎は少しだけ不思議そうにする。

「俺が来たの…さっきの理由で納得したんですか?」
「え、違うの?」
1番最初にはぐらかされたから、てっきり聞いて欲しくないのかと思っていた。

「いやなんか…あんまりにもすんなり受け入れられると…」
調子が狂うっていうか何て言うか…珍しく歯切れ悪く話す三郎に思わず笑ってしまう。

「もし違う理由があるなら、話したくなった時に話してくれれば嬉しいよ」
「…っ」





side.S



何と言うか、この人は一々卑怯だ。
突然自宅を訪れた生徒をホイホイ上げる無防備さとか。
始終向けられる柔らかい笑顔だとか。
相手に選択を任せた質問だとか。
基本的に相手の都合を優先させる優しさだとか。
どれもこれも今まで会った誰とも違って、嫌な所が見付からない。
俺が酷く居心地の良い環境を作り上げる。

(まぁ、あえて言うなら誰に対しても同じ態度ってのは釈かな)

そんなことを思いながら、キッチンに立つ先生の後ろ姿を眺める。
そのまま視線を移してぐるりと部屋の中を眺めれば、確かに…本しかない。
家具は少ないけど謎の置物だとか可愛いとは言い難い人形なんかが、そこかしこに点在していて、うん。綺麗とは言い難いな。

(まぁ大して俺の部屋も変わんないか)

本棚の本は、やはりというか医学書らしきものが多く、心理学や民族学と書かれた本も多い。
気になる本がないわけでもないが、読むとなると今日は目的が違う。

さっき俺が先生に言ったのは冗談じゃない(だいぶ軽く流されたけど)、俺は先生を独り占めしに来たのだ。

この新任の保健医様はやたらと生徒受けがいい。
学園内では邪魔が入りすぎる。

地道に自宅調べるなんてストーカー臭いとか…思わない、でもない。
だが愛故だ仕方ない(犯罪者も良くこれを大義名分にするとか気にしない)。



「先生ー、何作ってるんですかー?」
俺の勝手なイメージだが、先生は余り料理とか得意ではなさそうな気がする。
何と無く、何と無く。

「オムライスにしようと思ったんだけど、三郎くん大丈夫?」
顔だけこちらに向けてヘラリと笑う先生は少しだけいつもより楽しそうに見える。
「あ!大歓迎ですー!」
ニッコリ笑って俺は答える。
果たして、俺の期待は裏切られるのか否か。

そしてまぁ見事に期待は裏切られた訳だが。
「すげ、卵ふわふわ…」
「あはは、久々に人に振る舞うもんだから気合い入れちゃったよ」
出されたそれはどこからどうみても立派なオムライスで、レストランで出てきそうな見事な出来栄えだった。

「…うまっ」
恐る恐るスプーンで卵を崩し(見た目だけじゃない!本当にふわふわ絶妙な半熟具合だ!)中のライスと絡めて食べればもう、その一言しか出ない。

「そう?ならよかった」
先生も自らのオムライスの出来に満足な様で、ニコニコとスプーンを進める。

俺は取り付かれたように一心不乱にオムライスを頬張った。
だって本当、やたらと美味いんだ。

「先生が料理得意なんて意外でした」
あらかた皿の上を綺麗にして、俺が先生を見上げるように上目使いでぽつりと言うと、先生は困ったように笑う。
「一人暮らしが長いからね」
「ずっと一人暮しですか?」
「うん、大学入るのに実家を出てからずっとね」
「へー」

さっき部屋を見た感じから現在は女の影はなさそうだが、今まではどうだったんだろう…とふと浮かんだ疑問を、俺は自重せずに聞いてみる。
「先生彼女は居ないんですか?」
「ぶふっ」
やはり唐突だったのか、先生は小さく吹き出した。あからさまに動揺している。

「今?」
「今も昔も、先生の恋愛遍歴とか気になりますね」
「そんなの気にしてどうするのさ」
クスクスと笑う先生に、俺は澄まして口をつぐむ。
(そんなの、参考にするに決まってる)

「今はいないよ、大学生の時はまぁ…それなりに、ね」
それなり…それなり、まさかとは思うけどこんな人畜無害そうな人が女遊びとかしてるのは嫌だなぁ、と思う。
「それなりに遊んでた、と」
「遊んでないよ!ちゃんと本命!真剣に!」
よかった。
しかし自分から聞いておいて難だが、うん。少しムカつく。
「じゃあその人にもこのオムライス作ったんですか?」
最後の一口を頬張りながら小さく拗ねた様に呟けば、先生は困ったように笑う。

「まだその頃はたいした料理は作れなくてね、このオムライスは…人に作ったのは三郎くんが初めてだ!」
自分でもびっくりしたのか、手をポンと叩いて先生が笑う。
「…っ!」
俺はと言えば不意打ちでそんな事を言われ、拗ねていたのも手伝って気分の上昇は急がつく程で。
(これ、作ってもらって食べたの…俺が1番)
なにこの優越感!
みるみる機嫌の良くなっていく俺に気付いているのかいないのか、先生はニコニコとオムライスを頬張る。

(嗚呼!独り占め出来てる!嬉しい!美味い!!でもなんか釈然としない!!)
まぁそれが現在進行系の俺と先生の心の距離って奴なんだろうか。



++++++++
言い訳

グタグダ長々すみません…。
なんか…無性に台所に立つ乱ちゃんが書きたくて←

はい、楽しいのは私だけです←

此処まで読んで下さってありがとうございました!