成り行き的な話



※年齢操作、未来捏造です。
苦手な方はご注意下さい。






















































「またフラれたーっ!」
放課後、医務室で乱太郎が薬棚の整理をしていると、級友の団蔵がガラリと扉を開け飛び込んで来た。

(またか…)
そう思いながらも、乱太郎は律義に「いらっしゃい」と団蔵に笑って声を掛ける。

「乱太郎ー…何が駄目!?俺何が悪いの!?」
「うわっ!ちょ…っ団!」
団蔵が部屋に飛び込む勢いのまま乱太郎に飛び付き、自身より体格の良い団蔵に飛び付かれた乱太郎は当然尻餅をつく。

「いたた…」
「うぅぅ…悪い」
団蔵は尻餅を着いた乱太郎の腰に腕を巻き腹に顔を埋めながらも、ぽつりと詫びの言葉を漏らす。

「…で、今度は誰にアタックしたの?」
小さく溜息をつきながらも、乱太郎は団蔵の頭を優しく撫でながら尋ねる。

「くノ一教室のユカさん…」
「あぁ…あの背が高くて黒髪ストレートの」
乱太郎は団蔵の想い人を思い浮かべる。
(流石にレベルが高すぎるんじゃ…)

「…で?」
思っても口には出さずに、団蔵に話しの続きを促す(でないと何時までも開放されないのだ…)。

「それで、それで…フラれたんだよぅうおお!!」
傷口がぁああ…と叫びながら団蔵は乱太郎に更に力強くしがみつく。

「ぅ…、はいはい…それはそれは…うん、大変だ」
団蔵に締め上げられて苦しみながらも、乱太郎は団蔵の頭を撫でながら心の篭らない慰めの言葉をかける。

「可哀相、可哀相…頑張った、頑張った」
「うぅぅ…乱太郎まで冷たい」
「は!?…ぁあ、ごめんごめん、気のせい気のせい」
団蔵の一言に、乱太郎は一瞬沸き上がった殺意を何とか押さえ、団蔵の頭を撫で続ける。

(冷たい…ってこれで何回目だと思ってんのかな!?かれこれ五回は確実だよ!?それを毎回毎回相手して慰めて…え?私冷たい!?他の皆なんてとうの昔に放置決めこんでんのに!?)

乱太郎の胸の内では毎回付き合わされる事への苛立ちと「いや待て相手は傷心なんなんだ」という保健委員心がせめぎ合う。

「なんで?何で駄目なんだよぅぉお…」
団蔵の涙で段々上着が湿ってきている。

「はいはい、団蔵は恰好良いよ、性格も男前だし本当にどーしてフラれるのかねー」
乱太郎の視線は遥か彼方…窓の外をぼんやり眺めている。

「俺が告る娘…皆、好みのタイプは兵太夫って言ってんだって」
「へー…」
(事前にそれが分かっていて何故告白するんだろう…)
残念ながら乱太郎には団蔵の『とにかく当たって砕けろ!』精神は理解できない。
(だって結局毎回玉砕してるし)

「兵太夫と俺何が違うわけ!?何で兵太夫がモテて俺がモテないんだよー!」
(うーん…タイプが全然違うと、思うけど…)
思っても口には出さない。
「そうだねぇ…」
乱太郎は段々と面倒臭くなってきたのか、薬棚の木目の形を眺める。
(あ、あの木目なんかに似てる…)

「ぅっ…ぅう…っ」
声を押し殺して泣く団蔵は端から見れば可哀相かもしれないが、本人は意外と立ち直りが早いのであまり気にしない方がいい。

(えーっと、なんだっけ…何に似てるんだ?あれ?)

「ぅ…うっ…決めた…俺もう女の子好きにならない」
団蔵の突拍子もない決意は乱太郎には届かない。

(うーんと…)
「そうだ乱太郎!俺と付き合って!!俺乱太郎なら多分大丈夫!!」
何が大丈夫なのかは知らないが、団蔵は名案!とばかりに満面の笑みで乱太郎を見上げる。

(えーっと確か…うーん、ここまで出かかってるんだけどなぁ…ってあれ?団蔵なんか言ってる?)
「え、ん?」
話を聞いていなかった事を笑ってごまかそうとする乱太郎。
「な!良いだろ!?」
しかし団蔵ににっこりと念を押され、何の話かわらないまま思わず…

「う、うん、そうだねー」
と答えてしまった。



「よっし!決まり!!」
いきなり団蔵が立ち上がったかと思えば、団蔵は乱太郎の肩に手をかけしゃがみ込む。

(え…っと、何の話だったん…)
乱太郎がごまかすように団蔵を見つめへらりと笑うと、そのまま団蔵との距離が縮まり…。

チュッ

掠めるような軽い触れ合いではあった。
しかし確実にそれは乱太郎の唇に触れた。

(…)
笑ったまま固まる乱太郎を余所に、イキイキと元気を取り戻した団蔵は、再び立ち上がり今度は大きく伸びをした。

「じゃ!乱太郎これからよろしくな!」
それだけ言い残し、団蔵は軽い足取りで医務室を出て行った。

「…」





(…は?)

状況が読めないままの乱太郎が事の成り行きを知るのは、団蔵が他のは組のメンバーへ「乱太郎と付き合いだした」と触れ回り、兵太夫ときり丸に真相を問い詰められた時だった。




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おまけ



あれ以来団蔵は医務室へ入り浸っている。
「ちょっと団蔵…仕事の邪魔」
げんなりする乱太郎の隣で、団蔵は会計室から持って来た帳簿を開きそろばんを弾いている。
「え?そうかなぁ?」
「てか何でここで計算してるの!?」

「だって付き合ってるんだし、ずっと一緒に居たいんだよ!乱太郎と!」
「…っ!」
にっこり笑う団蔵に、乱太郎は言葉を無くす。

(ときめくな私…!)




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言い訳

すみません…。
漢前に決断力のある思春期な若旦那と基本的に優しいけと実はただの面倒臭がりな乱太郎が書きたくて…←

乱太郎はどんどん流されてほだされていきます(笑
でも団蔵を好きになれば成る程「どうせ私は女の子の代わりだし」と切なくなって悶々とします。
でも若旦那は代わりとかじゃなく、乱太郎が大好きです!笑


はい、凄く自己満足ですみません(土下座

此処まで読んで下さってありがとうございました!