浸哀
※年齢操作、未来捏造です。
苦手な方はご注意下さい。
苦しい、苦しい、苦しい。
胸が痛くて張り裂けそう。
こんなにも苦しい恋なんて、
できるならば、
忘れて仕舞いたいのに…
「乱太郎」
医務室の戸の向こうから、私を呼ぶ声がした。
「はい」
薬を煎じる手はそのままに、顔を上げて答えればゆっくりと戸が開いた。
「また徹夜?」
そこにいたのは庄左エ門で、少し眉をひそめて立っていた。
多分、私を心配してくれているのだろう。
「えっと…うん、でも今日はそんなに長引かせないから大丈夫だよ」
私は苦笑して答える。
「ならいいんだけど…最近一緒にいる時間が少ないから寂しい、かな…なんて」
照れ臭いのか、少しだけ顔を背けてそう言う庄左エ門に、私は少しだけ胸が苦しくなる。
優しい、庄左エ門。
私をとても、大切にしてくれる。
アホのは組なんて言われていた私達も今では五年生になって、私は相変わらず保健委員で、庄左エ門も相変わらず学級委員をしていて、でも私達の関係は四年の終わり頃から少しだけ変化していた。
仲の良い級友から、恋仲へ。
私なんかの何処が良いんだかわからないけど、庄左エ門が私を求めてくれたのだ。
「じゃあ、庄ちゃんも今日医務室泊まる?」
胸の中のもやもやをごまかすように、私が笑ってそう言うと庄左エ門も優しく笑う。
そのまま私の背に寄り掛かるように腰を下ろした。
「ん、そうするよ」
庄左エ門の温もりが寝間着越に伝わる。
こうして触れ合うと私はいつもそわそわして落ち着かなくなってしまう。
「乱太郎」
名前を呼ばれる。
「なぁに、庄ちゃん」
私は平静を装う。
「好きだよ」
二人きりになると、必ず言われるその言葉。
付き合い出してからずっと、何度も、何度も。
もう耳にタコが出来てしまうよ、と以前にふざけて言ったこともある。
それでも庄左エ門はいつでも何度でも真摯な愛を私に囁く。
「ありがとう、」
私も、好きだよ。
続けたいけど喉の奥で詰まってしまう私の言葉。
いつも、ありがとうで止まってしまう。
庄左エ門の事は好きだ。
それは事実で、彼の傍で流れる時間はとても穏やかで心地良い。
(でも、違う)
何が違うのか、分かっているけど分からない振りをして蓋をし続けている私の想い。
「…」
何か言いたいそぶりを見せたまま固まってしまった私に、庄左エ門はゆっくりと身体の向きを変え、私の手を取り私を引き寄せる。
「無理して、言わなくていいから」
笑う庄左エ門の瞳は少しだけ寂しそうで、私は罪悪感に胸がズキンと痛んだ。
「…僕が乱太郎に好きだと言うのは、乱太郎からも同じ言葉を聞きたいからじゃないよ」
ゆっくりと言葉を紡ぐ庄左エ門に、私は握られた手の平を少しだけ握り返す。
「ただ僕が、乱太郎が好きって事を伝えたいから言ってるだけなんだ」
ただの自己満足なんだよ、そう言って庄左エ門はもう一度優しく、私に微笑んだ。
「うん、ごめん」
私が小さく謝ると、「なんで謝るかな」と庄左エ門が困ったように笑った。
優しい、優しい庄左エ門。
(ごめんなさい)
庄左エ門の隣は、優しくて、温かくて、心地良くて…
全然似ていないはずなのに、何故かあの人を思い出す。
(ごめんなさい)
庄左エ門に告白された時、私は忘れられない人がいるから、気持ちには答えられないと言った。
庄左エ門はそれでも良いから、と…言ってくれた。
私の想い人が誰なのか、庄左エ門は多分知らない。
それでも彼は、真摯な愛を私に与え続けてくれる。
(ごめん、なさい…)
いつの間にか私は、そんな庄左エ門の優しさに、いつかのあの人を重ねていて。
ふとした瞬間、「違う」と勝手に落ち込んで…
(最低だ、私)
その度に別れようと私が言っても、頑なにそれを拒む彼に…
また少しだけあの人から注がれた愛に似た幸せを感じて…
嗚呼、何故こんなにも苦しいのに忘れることもできないで。
私の貴方への想いは、私を大切にしてくれる彼をも傷付けて。
こんなにも不毛な想いに果たして意味があるのかすら、分からないのに。
ただ…
ただ、私達は、大好きな人をひたすらに一途に想っているだけなのに。
終
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言い訳
グダグダですね…(土下座
視点を変えて書きたかったのですが結局乱ちゃん視点。
うーん…本当にグダグダで申し訳ありません…
乱太郎が好きだけど、拒まれるのが怖くて最後の最後まで求められなかった鉢屋と、大好きで仕方なかった初恋の相手、鉢屋をずっと思い続けてしまう乱太郎、そんな乱太郎を、1番じゃなくていいから傍にいさせてと素直に求めてしまえる庄左エ門。
それぞれの視点で書きたかったのですが力尽きました…
多分思い付いたら唐突に上げられると…いいな←無責任(土下座
此処まで読んで下さって本当にありがとうございました!