貴方の苦しみをどうか私に
※年齢操作未来捏造です。
苦手な方はご注意下さい。
南の空が赤く燃えていた。
「なんか午前中の騒ぎって火事だったんだって」
「へー」
擦れ違う上級生の噂話が耳に入り、私はぴたりと足を止めた。
午前中、三年は組は運動場で実技の授業を受けていた。
誰が言ったか忘れたけれど、誰かが「空が燃えている」と言った。
雨が降り出しそうな生憎の曇り空だった。
見上げれば確かに、南の空だけがオレンジ色に染まって、そこに混じる黒い煙りと雨雲の境界線は曖昧で、黒と灰色とオレンジのコントラストは決して綺麗と呼べるものではなかった。
「…」
私はくるりと踵を返し、三年長谷の自室へ向かった。
ガラッ
部屋に戻り戸を開ければ、きり丸が机に突っ伏したままこちらを振り返った。
「珍しいね、バイトは?」
「…今日はキャンセル」
不機嫌を隠そうともせずにぶっきらぼうに答えるきり丸に、私は少し困ったように笑う。
「ますます珍しい」
「…ほっとけ」
くるりと机に突っ伏したまま、きり丸が壁を向いてしまった。
「きりちゃん」
「…」
「…きり丸」
「…」
名前を呼ぶと、もう一度けだるげにきり丸がこちらを見る。
私は部屋の中へ入り、きり丸の隣に正座をして両手を広げてきり丸に向き合う。
「来て」
できるだけ優しく微笑んでそう言えば、きり丸はちろりと一瞬私に視線を寄越し、すぐに逸らしてしまう。
しかしきり丸の左手はそろそろと私の方へ伸ばされる。
俯いたままのきり丸の手を取り、両手でそっと包み込む。
きり丸は体温が低い。
ついでに冷え症だ。
掴んだ手はぞっとするほど冷たくて、私は少しだけ緊張した。
私に左手を包まれたまま、きり丸がまた私を窺い見る。
「きりちゃん来て」
もう一度私がそう言うと、きり丸はのろのろと身体を私の方に向け、私の膝に頭を乗せて右手を私の腰に回した。
きり丸の左手を掴む右手はそのままに、膝に乗ったきり丸の頭を左手で優しく撫でた。
「さっきの火事…建物は燃えたけど死傷者はでなかったんだって」
「…」
きり丸は何も答えない、代わりに腰に回された腕に少しだけ力が込められた。
きり丸は戦で家族を亡くしている。
合戦場では弁当を売ったりなんだりバイトに精を出しているきり丸だけど、火事や焼き打ちの話題が出るとあからさまに機嫌が悪くなる。
あからさまにって言うのは私から見ての話しで、他に気付いている人はいないかもしれない。
そもそもそれ自体私の勘違いかもしれない。
でもそういう時のきり丸は何時もみたいに素直に甘えてくることが決してなくて、それでいていつも以上に優しさを求めている。
…ように感じる。
だから私はそういう時はできるだけきり丸の側に居ようと思っている。
きり丸からしたら、本当は一人で考えたい事とかもあるかもしれないから迷惑かもしれない。
でも、私は今みたいな状態のきり丸を絶対に独りにはしたくない。
私は私の我が儘で、きり丸の側にいる。
まだ、きり丸から拒絶されたことは無い。
一から十まで、全て私の自己満足だ。
「きりちゃん…大好きだよ」
きり丸の長い髪を撫でながら、私は言った。
相変わらずきり丸は何も言わない。
ただ私の右手を強く強く握り返してくれた。
たったそれだけのことが、私を酷く幸せな気持ちにさせる。
(いつかきり丸の苦しみを、取り除いてあげれたら…)
そうしてまた一つ、自己満足で傲慢な私の願いが増えていく。
終
+++++++++
言い訳
何が書きたいのかわかりませんね(土下座
トラウマを抱えたまま生きているきり丸と、そんなきり丸を支えたいけどその感情が自己満足でしかないことを理解している乱太郎。
もちろんきり丸からすれば、自分が辛い時に必ず傍に来てくれる乱太郎に感謝こそすれど、疎ましく思うなんてありえません。
でも気が滅入っている時のきり丸はそんなこと一々乱太郎には言いません。
そんなきり丸の態度に、自分の行いは、きり丸に取って迷惑でしかないのではないだろうか…と悩みながらも、自分のしたいことを優先させ、その事にさらに自己嫌悪を募らせていく乱太郎。
結局両想いなのに、うまく繋がれない感じで。
みたいな話しが書きたかったんです。←
本当に表現力無くて申し訳ないです…
此処まで読んで下さって本当にありがとうございました!