苦しむ姿がいとおしい
乱太郎が欲しい、
ただそれだけだ。
最近、乱太郎が図書室に良く来る。
多分、雷蔵に会いに。
そして雷蔵はそれを知らずに乱太郎が図書室に良く来る、と言う理由でいつもよりも多く図書当番を引き受けている。
端から見ればこんなにも解りやすいのに。
鈍いって罪だよね。
「それではお借りしてきます!」
雷蔵と話していた乱太郎を眺めながらそんなことを考えていると、乱太郎がくるりとこちらを見る。
勿論乱太郎を見つめていた俺と乱太郎は目が合った訳で。
雷蔵の姿の俺に、一瞬困惑した表情をした乱太郎が、もう一度くるりと俺に背を向け、雷蔵に何やら話し掛ける。
今まで話していた相手が本当に雷蔵かどうか確認した、ってところかな?
少ししてまた乱太郎はこちらを向いて歩き出した。
ちらりと俺を見てから、視線を逸らす。
乱太郎の後ろでは雷蔵が少しだけ怪訝そうにこちらを見ていた。
俺はなるべく自然に雷蔵に笑いかける。
乱太郎は黙々と前だけを見ながら俺の前を通り過ぎようとする。
(そんなに緊張しなくても良いんじゃない?)
乱太郎が俺を意識してくれているようで、俺は内心ほくそ笑む。
目の前を通り過ぎる乱太郎の腕をとり、ぐっと引き寄せ耳元で囁く。
「雷蔵と話せて良かったね」
バッと乱太郎は俺から身体を離すと、顔を真っ赤にして俺を睨む。
ちらりと奥へ視線をやると既に雷蔵は居なかった。
「…」
「乱太郎の怒った顔好きだよ、だってそれ…雷蔵には見せた事ないだろ?」
雷蔵の顔で俺が微笑むと、乱太郎はハッとして今度は悲しそうに表情を歪めて俺を見つめた。
「そういう顔も好きだよ、乱太郎の全部が好き、だよ」
「鉢屋、先輩…っ!」
乱太郎は周りをキョロキョロと気にしながら、今度は自分から俺に詰め寄った。
おそらく「こんな所で何を言うのだ!」と言う抗議なのだろう。
ここは図書室で、確かに他に人目もあるが、距離的に俺達の会話を聞き取れる者はいないだろう。
例え聞かれていたとしても俺としては問題はない。
「諦めないって、言っただろ?」
ニヤリと俺が笑えば、乱太郎は少しだけ泣きそうな顔をして俺を見る。
「…困る?」
俺がそう聞けば、小さくこくりと頷き、乱太郎はそのまま下を向いてしまった。
少しだけ、胸がチクリとした。
けれどそれは予想していた反応だ。
「乱太郎が嫌なら、俺が乱太郎を好きな事が耐えられないって言うなら…もう二度と、乱太郎に近づかない」
俺は雷蔵の顔でにこりと笑ってそう言った。
乱太郎はそんな俺に驚き顔を上げる。
「学園からも出ていくし、もう二度と君の前に姿を現さない」
とても卑怯な、言い方だと…わかっている。
(でも、これで乱太郎は俺を拒めなくなる)
それを聞いた途端、乱太郎は抱えていた本を床に落とし、俺の服の袖を強く握った。
(ほら、)
乱太郎は俺の袖を握ったまま、ふるふると首を振った。
「そんなのは、駄目…です」
優しい君は、自分のせいで俺の今後の学園生活が左右されてしまうなんて堪えられないだろう。
ほぼ脅迫に近い、わかっている。
もう一押しとばかりに、俺は言った。
「でもそれじゃあ、これからも乱太郎を困らせてしまうよ?」
つくづく、性格の悪い奴だと…自分でも思う。
袖を握ったまま、乱太郎はまた泣きそうな顔で俺を見た。
乱太郎が、苦しんでいる。
俺のせいで、苦しんでいる。
心が満たされるような、そんな気がした。
「それでも良いの?」
少しの沈黙の後、乱太郎が小さく頷いた。
何か言いたそうに俺を見つめるその瞳は、酷く切なげで官能的だ。
「…乱太郎が、好きだよ」
乱太郎の頬を撫でながら、俺は無意識に雷蔵の消えた奥の棚を眺めた。
(何だってするよ、俺は)
(乱太郎を手に入れる為なら)
終
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言い訳
うーん…ぐだぐたで申し訳ないです…。
正直自分でも方向が定まってないです…(土下座
自分の気持ちを必死に隠してどんどん病んでいく雷蔵。
乱太郎を煽りながらも徐々に乱太郎の逃げ場を奪っていく鉢屋。
自分の気持ちを見失いかけている乱太郎。
乱太郎視点を書きたいと思うのですが難しいです…。
文才が欲しいです。
ここまで読んで下って本当にありがとうございました!