淡い

※成長庄×乱です。
未来捏造苦手な方はご注意です。








































月日が流れるのは早いもので、あんな壊滅的な成績でも、僕らは全員揃って最上級生になった。

六年間学級委員長を勤め続け、もう慣れすぎてしまった日誌の記入。
放課後の教室に僕以外の人影はなかった。
流石に六年にもなると、皆自主鍛練や委員会活動に余念がなく、それぞれ充実した毎日を送っている。

最近、きり丸と乱太郎が付き合い始めた…ようだ。
ようだ、というのは直接本人達から聞いたわけでも、噂があるわけでもないからだ。
ただ…見ていて「おそらくそうなのだろう」と感じただけだ。

もともときり丸は乱太郎への想いを隠そうとはしていなかったし、乱太郎はそれを容認していたようだし…
もとから、わかっていたことだ。

僕のこの想いは決して叶わない。
ずっとずーっと、片思い。

わかってて、諦められなかったこの六年。
そして多分、これからも…



重症だな…。



「あれ…?庄ちゃんだけ?」

ガラッと引き戸を開けて現れたのは、今の今まで思い浮かべていた人物。
乱太郎だった。

「あ…あぁ、僕だけだよ」

焦った…

なんとか普通に答えたけど、声が裏返らなくてよかった。

まだ動悸の治まらない胸に拳を押し付けながら僕は小さく息をはいた。

「日誌?」

乱太郎が僕の手元を覗き込み、小首を傾げながら尋ねてきた。

可愛いなぁ…

三年の後半から伸ばし始めて、今では腰に届きそうなほどに伸びた髪を一つに束ねた乱太郎のそれは窓から差し込む西日にキラキラと輝く。
「うん、今書き終わったところだよ」
不自然にならないように微笑んで答える。

「庄ちゃんは六年間学級委員長だったね」
くすくすと乱太郎も笑う。
「うん、乱太郎も結局六年間保健委員会だったね」
言えば乱太郎は困ったようにまた笑う。
「今年は保健委員長にまでなったしね…伊作先輩二号になっちゃったよ…」
ため息をつきながら五年前に卒業した先輩を思い出しているようだった。

「私たちが六年生だなんて、なんだか不思議だよね」

唐突に遠くを見るように言った乱太郎の一言に、僕も頷く。

「…もうすぐ、卒業だね」

少し寂しそうに乱太郎はまた言葉を紡ぐ。
間近に感じる君の薫りにくらくらする。

ふと、思い出す。

一年前に一度だけ、
君と口付けたあの日のこと。

「ねぇ庄ちゃん」

「なに、乱太郎」

乱太郎はいつの間にか視線を僕へと戻し、真っ直ぐに…僕の瞳を見つめていた。

「五年の時…教室で…」

教室で…

僕は乱太郎に口付けをした。

放課後、やはり今日のように日誌を書くのに一人残っていた僕と、委員会の提出書類を作るのに残っていた乱太郎。

特に会話もなく、二人並んで黙々と作業を進めていた時、偶然…
本当に偶然。
何気なく乱太郎を見たら乱太郎も僕を見ていて、目が合った瞬間にふわりと笑った乱太郎に、僕はくらりと眩暈を覚えて…

気が付けば、引き寄せられるように口付けていた。



「どうして私に口付けたの?」

乱太郎こそ、どうして今…それを聞くの?

「覚えてたんだ」
「忘れられるわけ、ないじゃない」
少し苦しそうに笑う、乱太郎。

「…あの後、何も聞かれなかったし、態度もいつも通りだし…乱太郎はあの口付けを、なかったことにしたかったんだと思ってた」

多分、僕も今苦しそうに笑ってる。

「…ずっと聞きたかったんだけど、庄左エ門こそいつも通りで…聞くのが怖くなっちゃったんだ」

ねぇ、なんで…

「なんで、今聞くの?」

「今聞かないと、後悔しそうだから」
「後悔…?」
「うん、だから…教えて」

乱太郎は今度は泣きそうな顔で僕を見ていた。
そんな顔をされると、なんだか僕まで泣きたくなってくる。

「…好き、だからだよ」

あぁ、言ってしまった。

「乱太郎のことが、ずっと好きだったから」

叶わない恋だから、ずっと言わないつもりだったのに。
…だって乱太郎はきり丸が好きで、二人は付き合ってて、僕の想いが届くことなんて…

「…私も庄左エ門が好きって言ったら、庄ちゃんは迷惑?」

「え…?」

乱太郎は涙を溜めた瞳で、今度は困ったように笑っていた。
ほんのりと色付く頬に、どきりとした。

「だっだって、え!?乱太郎はきり丸と付き合ってるんじゃ…」

驚きと困惑と実感のわかない喜びのようなふわふわした感情が沸き上がり、わたわたとうろたえる僕。

「誰が言ったのさ、そんな話」
「い…いや僕が勝手にそう思ってたんだけど…でも、違うの?」
「違うよ、もう…」

乱太郎はまた困ったように笑う。

「庄ちゃんに口付けされた時、びっくりしたけど嬉しかった。でも庄ちゃんってばその後何もなかった見たいに『日誌書けたから先に帰るな』って…」
「それは…!その…自分でも自分の行動に驚いてて…頭が真っ白だったんだ、その時…でも乱太郎も『うん、じゃあ』って普通に笑って手を振って別れたじゃないか」
「私も頭が真っ白で、なんのリアクションも返せなかったんだよ、あの時…」

「………」
「………」

ようやくお互いの誤解も解け、気恥ずかしい沈黙が続く。

「順番、めちゃくちゃだけど改めて言うよ…僕は乱太郎が好きです」
「わ…私も庄左エ門の事が…ずっと好きでした」

改めてみれば、余計恥ずかしくなった。
真っ赤になって顔を見合わせれば、そんなお互いがおかしくて声を出して二人で笑った。

笑いが治まると今度は鼓動が早くなって、見つめ合う瞳が少し熱っぽい。

「ねぇ、乱太郎…もう一度触れていい?」
「うん…」

西日の差し込む教室で僕らの影がかさなる。







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言い訳

長い!
もっと簡潔にわかりやすく萌を表現できるようになりたいです。
てかこれ成長させる意味なかったかな。
幼い。
でも庄乱はそんなとこが好き!←聞いてない

ここまで読んで下さってありがとうございました!