狂ってるって誰かが言った
いつからだろう。
君のその視線の先に、あいつがいることに気がついたのは。
「雷蔵のこと、好きなの?」
図書室で本棚の整理をしている雷蔵を見つめていた乱太郎に、鉢屋はぽつりと問い掛けた。
「え…えっ!…いえっあ、いえ、はい!好き…です、よ?」
一拍遅れてのあからさまな動揺に、鉢屋は表情を変えずに納得する。
「ふーん、でもあいつはノーマルだよ?」
「えっ…ちょっ、ちっ違いますよ!好きっていうのはその、尊敬とかそういう…」
鉢屋の言葉の意味を理解すると、乱太郎は一瞬瞳を揺らめかせた。しかしすぐに慌てて弁解しようとしたが、鉢屋の中では既に確信と変わっていた。
「はいはい」
と適当に手を振って答える鉢屋に、
「本当に違うんですー」
と先程から少し大きな声で叫んでいたため、図書室委員長の不穏な気配に怯え、小声で乱太郎は尚も否定を続けた。
鉢屋が乱太郎が雷蔵を好いていると感じたのはもうだいぶ前からの事だった。
(雷蔵…か)
鉢屋は乱太郎に特別な好意を抱いていた。
だからこそ、乱太郎の視線の先の存在に気付けたのだが。
鉢屋の予想では雷蔵も乱太郎の事を好いている。
雷蔵に乱太郎の気持ちを気付かせてやれば、乱太郎はきっと幸せになれるだろう、しかし…
(そんな出来た人間じゃないしね、俺)
自分が1番ですから。
だからこそ雷蔵が「ノーマルだ」なんて乱太郎に言ったのだ。
脈がないと思わせる為に。
「乱太郎、少し付き合って?」
鉢屋はにっこり笑うと乱太郎の手を引き図書室を出た。
その後ろ姿を雷蔵が見つめていたのにも気付いていた。
乱太郎を連れて鉢屋が訪れたのは今は使われていない用具倉庫だった。
「あの…鉢屋、先輩?」
道中一言も言葉を発せずにやってきた鉢屋に、乱太郎が不安を抱くのは当然で、上目使いに鉢屋を見上げる。
(可愛いなぁ…)
そんな乱太郎に、鉢屋は微笑みかける。
同時に自身の中でほの暗い感情が沸き上がるのを感じた。
「乱太郎」
「は…はい」
そっと乱太郎の頬に両手で包むように触れると、乱太郎の肩がびくりとした。
今ここは、倉庫の暗がりだ。
「乱太郎が好きだよ」
そして鉢屋は今、不破雷蔵の姿に化けていて。
「…っ!」
当然声も友の声音を模写したそれで。
乱太郎が激しく動揺しているのが鉢屋にも伝わる。
一瞬目を見開き、そして悲しそうに歪む表情に、鉢屋はこの子もこんな表情をするのかと、いつもと違う乱太郎を見れた事に純粋な喜びを感じていた。
「…からかわないで、下さい」
少し怒った声音で乱太郎が言った。
そんな乱太郎を見ながら、鉢屋は静かに答える。
「からかってない、私は乱太郎が好きなんだ」
鉢屋は普段自身を「俺」と言うが、実習中や真剣な場面では「私」を使う。
鉢屋の真っ直ぐな視線に、乱太郎は目を逸らしたくなる。
乱太郎も目の前の存在が雷蔵ではないことを、理解していた。
でも、雷蔵と同じ顔で、同じ声での告白に…身体が動かなかった。
こんな状況で、こんな乱された心では…錯覚してしまう。
乱太郎の中でも感情が絡まって上手く整理出来ない。
「私なら、君の望む全てをあげる」
雷蔵を思い続ければ辛いだけだよ?と、固まったままの乱太郎を引き寄せ、鉢屋がそっと耳元で囁く。
「君の前でなら完璧な雷蔵でいてあげる」
そんなこと、できるわけがない(技術云々ではなく感情的に不可能だ)、それは鉢屋自身理解していた。
しかし、乱太郎を手に入れる為なら今はどんな卑怯な行いも嘘もつけると、鉢屋は思っていた。
現に今、友を裏切るような行為をしている。
「好きだよ…乱太郎くん」
雷蔵が乱太郎を呼ぶように、優しく優しく…囁いた。
終
………………………
言い訳
はーい!MAX不完全燃焼!土下座
乱太郎はどうしたんだ結局!?
…ですよねー(土下座
乱ちゃん、まだ幼いので流されちゃうこととかあると思います。
多分…(未定かよ!
このあとのgdgdエピソードをまた此処に上げると思います(自己満足☆
矢印交差などうしようもない話大好きです!←お前がどうしようもねぇ
本当に駄文ですみませんでした…(土下座
此処まで読んで下さって本当にありがとうございました!