夢のお話
最近、良く眠れない。
深夜、ふと目が覚める。
真っ暗な自室の低い天井をぼうっと眺める。
大分温かくなったが、この時間はまだまだ冷える。
布団へ少し深目に潜り、もう一度目を閉じる。
瞼の裏に蘇る光景にハッと目を開ける。
(夢…?)
おそらく先程まで見ていた夢の残像だろうか。
それは酷く静かな夢で、
それはとても愛しい夢。
夢には大好きなあの子が出て来て、小さな両手で必死に俺の首を絞めるのだ。
乱太郎が誰かを殺すなんて想像も出来ないし、そんなことになれば1番傷付くのはあの子自身だから、決してそんなことにはならないで欲しいと願うけど。
それは本心なのだけど。
夢の中で俺はいつも乱太郎に殺される。
音も色も匂いもない、そんな世界で。
君に首を絞められる。
君は首を絞められている俺よりも苦しそうに顔を歪ませて、小刻みに震える両手がやけにリアルなのだが、君の頬を伝い落ちる涙には温度がなく…
毎夜、俺はそれが夢なのだと気付くのだ。
明るく元気で、笑顔の似合う君が好きなのに、夢の中で君はいつも泣いている。
「うーん、僕は専門じゃないからはっきりとは言えないが、夢の中の相手と自分と言うのは、立場的には逆を現していることがあるそうだよ?」
寝不足で足元をふらつかせていた俺は、級友達の薦めで医務室に来ていた。
あの子は保健委員だからもしかしたら会えるだろうかと言う儚い期待は、新野先生の留守を任され医務室で薬を作っていた善法寺先輩に打ち砕かれた。
先輩の顔を見るなりため息をついた俺に、先輩は若干頬を引き攣らせたが医務室での仮眠を許可してくれた。
寝不足だと言えば当然のように「悩み事か?」と聞かれ、俺は断片的に毎晩見る夢の話しをしたのだ。
「逆…ですか?」
「そう、立場や感じる感情…例えば鉢屋の夢の場合、苦しそうに君を見つめる相手は、相手を見つめる君自身となる」
(あんな、顔してる?…俺。)
夢の中の苦しそうなあの子の顔を思い出す。
「じゃあ、俺自身が相手を殺したいと無意識に思っているんでしょうか…?」
「それも違うかな、殺される、殺す夢…死を連想する夢は、成功を暗示することが多いらしいし」
「へー…」
「首自体は性的欲望を表しているらしいし」
「ぶっ…」
…つまり何ですか?欲求不満の現れですか?
「まぁだいぶ滅入ってるみたいだし、開き直って告白してみたら?その女の子に」
パンっと手を叩いて善法寺先輩は笑って言った。
「…はぁ」
女の子、じゃないんすけどね。
…でも確かに、
「らしくなかったかもしれませんね…」
自嘲気味に笑う俺に先輩も優しく笑った。
「明日、告ります」
「頑張れよ」
普段人に弱みを見せない俺からの相談に、大分気を良くしていた先輩は他の下級生にするように、俺の頭を撫でた。
後日、
「私、鉢屋先輩とお付き合いすることになったんです!」
何をすれば良いんでしょうか?
と、いつも薬の名前を聞くのと同じノリで(あの子の性格だ、想像がつく…)乱太郎から告げられた先輩が、扇片手に血走った目で五年長屋に殴り込みに来たのは…俺のせいでは無いと思う。
終
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言い訳
シリアス挫折しました…
首を絞める、絞められる夢ネタは某ボカロ神曲より…(笑
でも夢占いで意味を調べていたらなんだか予定していた内容からどんどん違う話に…
しかも乱太郎まともに出て来てないっていう…(土下座
本当にグダグダですみません…
此処まで読んで下さって本当にありがとうございました!