酔いどれ蜜夜



※成長庄×乱です。
乱太郎がノーマルです。
苦手な方はご注意下さい。






















































見つめるのは底の見えない深い翡翠。
潤んだそれの破壊力は凄まじい。
おまけに酔いのせいで呂律の回らない舌と上気した頬。
愛しい相手がそんな状態で僕を組み敷き見下ろしている。

ねぇ、これってチャンス?



「で、言われたの…他に好きな人が出来たって…」

ぐすぐすと泣きながら僕の上で泥酔気味の乱太郎が言う。
「それは、辛いね…」
乱太郎に馬乗られている僕は、本日何度目かしれないため息を漏らす。

数刻前、部屋で宿題をしていたら、酒瓶を抱えた乱太郎がやってきた。
乱太郎はその時既に大分酔っていたようだ。
決して強くもない酒をこんなに煽る彼を見たのは勿論初めてで、扱いを悩んだ僕はとりあえず同室の伊助にきり丸達の部屋へ行ってもらい、乱太郎から話を聞くことにした(おそらく今頃伊助の突然の訪問に残りの二人が慌てふためいていることだろう)。

話を聞けば最近付き合いだしたくノ一にフラれたらしい。
実は僕は乱太郎から度々その件で恋愛相談を受けていた(何故僕かと言えば、きり丸や他のは組メンバーが、想い人である乱太郎の惚気話に精神的ダメージを受けすぎ、再起不能になった為だ)。
自分の好きな相手が自分以外の想い人について語るのに付き合うのは、勿論苦痛以外の何物でもなかったが、おかげて乱太郎と二人きりで過ごす時間が増えたのも事実で、僕としては複雑なところだった。

「うぅ…私、何かしたかなぁ」

本気でショックを受けている乱太郎の背中をポンポンとあやすように叩く。

「乱太郎は悪くないよ、女心は複雑なんだよ…よくわからないけど…」
「うぅー…庄ちゃんは優しいねぇ…いっつも私の話聞いてくれるし」
乱太郎は僕の胸にぴたりと頭を付けるように身体を倒す。

「乱っ…!…そ、そうかなぁ…」
僕は突然の更なる急接近に一瞬声を裏返らせたが、なんとか平静を装い答える。

「庄ちゃんは優しいよー…私そういう庄ちゃん大好きだものー…」
庄ちゃん大好きーと僕の腹の上でムクムク動く乱太郎に、僕は言葉を失う。

(違う、わかってる)

乱太郎は僕の変化には気付かずに再びフラれた恨み言を回らない舌で語り始めた。
しかし既に僕にはそれらを聞く余裕がなくなっていた。

(好きの、意味が違う)

頭ではわかっている、乱太郎が僕を友達として好きだと言っていることも、甘えるようにじゃれてくるこの状況が酒のせいであることも。
わかっていても、微かな希望に縋りたくなってしまう僕は…愚かなのだろうか。

「もう女の子なんて知らないー!もう恋なんてしないーー!」
うわーぁんと声を上げて泣く乱太郎の左手を掴み、僕は乱太郎を自分の胸に閉じ込める。

「乱太郎」
「んー…庄ちゃんいきなりなにー」
ぐっと乱太郎を捕まえる腕に力を込めた。

「…?」

乱太郎の肩口に顔を寄せる僕には、乱太郎の顔が見えなかった。

「ねぇ、乱太郎…僕と付き合ってみる?」
凄く、大切にするよ?

…なんて、酔っ払い相手に何を言っているんだ僕は。
自嘲する僕をよそに乱太郎は、僕の胸から顔を離し、まじまじと僕を見つめる。

「…うん、庄ちゃんだったらいいよ」

そう言ってにへらと笑う乱太郎に、僕の胸が高鳴る。

酔っ払いの、戯れ事だ。

今の乱太郎は正気じゃない。

酔いが醒めて明日になれば覚えてすらいないかもしれない。



でも、

「じゃあ、口付けていい?」
「うん」



こんな甘美な誘惑に、僕は勝てるわけがない。






――――――――――
言い訳

酔っ払い相手とはいえ庄ちゃんたら随分強引ですね!←
すみません…(土下座

乱太郎は周りが自分を好きだなんて全然気付かないで普通に青春しています。
毎度相談役は庄左エ門。
きり丸他は組メンバーは聞いてくれないから←皆「チックショー!人の気も知らないでー!」と泣いて駆けていきます。
しんべえに話すといつの間にかしんべえの惚気話に替わっているっていう(笑

はい、本当にまた不完全燃焼ですみません…(土下座

ここまで読んで下さって本当にありがとうございました!