君が好きです、大好きです



※注意!
ヒロト→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→円堂です。
気持ち悪いくらい円堂くん円堂くん言ってます。
時間軸は二期〜三期にかけて。


















































好きの特別は、家族だけだと思っていた。

僕はずっと家族が欲しかった。
父さんが欲しかった。
母さんが欲しかった。
姉さんが欲しかった。
兄さんが欲しかった。
弟や妹が欲しかった。
何を約束しなくとも、強い絆で結ばれた、家族がずっと欲しかった。

だから僕にとって義父さんは特別で、絶対で、何をしてでも守りたい人だった。
例え義父さんが間違いを犯しても、僕だけは義父さんの味方でいようと思っていた。
それが僕の思う家族の在り方だったから。



だけど。

「一緒にやらないか!?」
キラキラとお日様みたいに眩しい笑顔を向けて、悪意のカケラも無い、真っ直ぐな円堂くんの瞳を見た瞬間。
僕の好きの特別は姿を変えた。

円堂、守。

ほんの敵情視察のつもりだったのに、見れば見るほど僕は円堂くんから目が離せなくなった。
(彼はどうしてあんなにキラキラしているんだろう)
(彼はどうしてあんなに楽しそうなんだろう)
(彼の周りはどうしていつもあんなに温かさそうなんだろう)
疑問は日に日に大きくなって、ついには見ているだけでは物足りなくなった。
(円堂くんと話してみたら何かわかるかもしれない)
(円堂くんとサッカーしたら何かわかるかもしれない)
そうして今度は、ただ話すだけでも、ただサッカーするだけでも足りなくなって、どうしていいのか万策の方が尽きてしまった。

(円堂くんが笑うと、嬉しい)
(円堂くんと話せると、嬉しい)
(円堂くんともっともっと仲良くなりたい)
自分なりに円堂くんへの思いを整理してみたけど、キュンっと胸が苦しくなるだけで、答えなんて見付からなかった。
そして気付く、例え敵同士でも、僕の思いは円堂くんへと真っ直ぐに向かっていて、そこには義父さんの命令も、グランとしての使命も全部、無くなっていることに。



(変だな、義父さんが一番じゃなくなってる)



首を傾げる僕を、気に止める人は誰もいなかった(だって皆自分の事でいっぱいいっぱいだったから)。
自分が円堂くんをとても好きだという自覚はあったが(円堂くんの存在で、行動で、言動で、不快感を感じたことは一度もなかったから)、その好きが、僕の最上級とする家族を超えた時、僕にはその感情を理解することができなかった。

(変だな、僕は円堂くんのもっともっとを求めてる)

家族への好きは、与え続けて、与え続けられるものだと思っていた。
相手の為をたとえ一方的であっても、ただただ思い続けるのが家族への思いだ。

だけど円堂くんへの思いは少しだけ違っていた。
(僕が円堂くんを思った分だけ、僕も円堂くんに思って欲しい)
自分が好きなだけでは物足りない。
僕の事も円堂くんに好きになって欲しい。

(こんなエゴイスティックな好きってあるんだ)

正直に僕は驚いた。

そしてそのエゴは、今までの家族への好きとは比べものにならないほどに大きくて、温かくて、幸せで…僕は。



(これって、もしかしておかしいんじゃないだろうか?)

円堂くん、円堂くん、円堂くん…ねぇ、ねぇ円堂くん、教えて?
僕は君を好きなのかな。
君を凄く凄く好きなんだけど、これってなんだか今までの好きとは違うんだ。

僕は、僕はね、君の全部が欲しいくらい、君が一番好きなんだ。

(ねぇ、ねぇ、円堂くん)

君に触れたいって思っているんだけど、触れても良いかな、大丈夫かな。

(ああ、でもどうしよう…嫌われたら嫌だな、円堂くん、嫌わないで欲しいな…円堂くん、円堂くん、円堂くん…)
好きで好きでどうしようもなく膨らんだ感情は、臆病風に吹かれた途端、小さく萎んで萎れてしまった。

(それに、円堂くんはいつも皆と一緒だから、だから…きっと僕が円堂くんを思うみたいに、円堂くんが僕を思ってくれることなんか、ないん、だ)
(………おかしいな、あんなに幸せな気持ちだったのに、急に今は…)
押し潰されそうに苦しくて何もしていないのに涙が溢れる。
おかしいな、おかしい。
今はもう円堂くんと敵同士じゃないのに。
戦いが終わって、今度は一緒に世界を相手に仲間として戦う事になったのに。



「円堂くん…」
練習のあと、一人でグラウンドから空を眺めて円堂くんの名前を呟いた。
「呼んだか?」
「っ!?円堂くん!?」
聞く人はいないと思っていた呟きに、まさかの本人からの返事を貰って、僕は酷く慌てて振り返った。
「どうかしたのか?こんなところで一人で」
円堂くんが、ちょこんと僕の隣に腰を下ろす。
(円堂くんが、隣に…嬉しい、なぁ)
じんわりと胸が温かくなって、キューンと何かが込み上げる。
「ううん、なんでもないよ」
ニッコリと笑って答えたら、何故だか円堂くんは困ったように笑った。
「そっか、ならいいんだ…なんかさ、今日ヒロト、元気無い気がしたからさ…俺そういうの、鈍感…だから」
違うんだったら良いんだ、良かった。
円堂くんはそう言って前を向いて笑った。
その横顔も、なんだか少しだけ寂しそうに見えて、いつもの円堂くんと違う気がして。
(あ、今僕は円堂くんを傷つけたかもしれない)
僕はハッとした。

(円堂くんは僕を心配して来てくれたのに)
(なのに僕は『なんでもない』なんて嘘をついて)
(円堂くんを…きっと傷つけた)
円堂くんは自分を鈍感だと言ったけど、実際はそんなことはなくて、円堂くんは優しいからいつだって相手の言葉を真っ直ぐ信じるから、例えそれが強がりだって、嘘だって信じようとしてくれるから、きっといつもいつも…少しずつ少しずつ傷ついている。

(ああ、ああ、ああ…優しいな円堂くん、あったかいなぁ、好きだなぁ、好きだ…円堂くん)
嘘を付いたはずの『なんでもない』が、円堂くんの隣にいると本当になんでもないことになっていた。
(不思議だなぁ…)

「…円堂くん、ありがとう…心配してくれて、本当はね…少し落ち込んでいたよ」
「ヒロト…」
僕がそう言ったら円堂くんはキョトンとした顔で僕を見た。
「でもね、円堂くんが来てくれたから、大丈夫になっちゃったんだ」
僕は笑った。
(本当だよ、嘘じゃないよ、強がりでもない…僕は)
「円堂くんが傍にいてくれるだけで、幸せな気持ちになれるんだ」

円堂くんは驚いた顔をしていたけど、今度は照れたように笑ってくれた。
「へへ…なんか、照れる…でも、ヒロトがそうなら、俺も嬉しいよ」
「うん」
今度は二人、顔を見合わせて僕らは笑った。



(円堂くん、円堂くん…僕の好きな人、僕が特別に…好きな人)
(円堂くんの傍はあったかい、円堂くんの笑顔は可愛い、円堂くんと話せると…幸せ、なんだ)



ああ、もしかしたらこれが、愛って感情なのかな。


++++++
言い訳

私の中の円堂くんへの愛が爆発したのでヒロトに代弁してもらいました←
酷いくらいオチが行方不明でごめんなさい(土下座
勢いだけでしたごめんなさい…(土下座
表現力欲しいです。

此処まで読んで下さって本当にありがとうございました!