ただ、君のために。



ただ、焦がれていた。の続き的な…。
ドラマCD視聴前に書いたので捏造酷いです←言い訳

苦手な方はご注意下さい。


















































エイリア学園との戦いが終わってから、円堂の様子が少し…おかしい。




「おはよう!風丸!」
通学路で会った円堂が、いつもと同じ明るい笑顔で俺に声をかけた。
「おはよう、円堂」
ニコリと笑って俺も答えると、すかさず円堂はエヘヘと笑って俺の隣に並ぶ。
「一緒に行こうぜ!」
「ああ!」
返事をして一歩を踏み出した時、最近感じる違和感をまた感じた。
(…なんだ?)
首を傾げても違和感は違和感のまま、理由は分からない。

「そういえばさ!風丸、数学の宿題やったか?」
歩きながら円堂が聞くので、俺は隣を見ながら答えようとして、予想していたより一歩後ろを歩く円堂に少し驚いた。
(あれ?)
「当たり前だろ、宿題なんだから」
「だよなぁ…あの、な?風丸…」
何か違和感の理由が分かった気がしたのだが、円堂が上目遣いに首を傾げながら俺の名前を呼んだ事のインパクトが大きく、頭が一気に沸騰しそうになって考えていた事も吹っ飛んだ。
(うっ…可愛い、)
「………駄目だぞ」
ドキドキとしながらも表面ではなんとか平静を装い、予想される円堂のお願いにすかさず断りをいれる。
が、正直自分でも断り続ける自信はなかった。
「まだ何も言ってないだろ!」
ムッとしたように口を尖らせる円堂だが、それもまた可愛いくて困る。
「宿題見せろってだろ?」
「…う、だ、駄目…か?」
図星をつかれた途端シュンとする円堂が、またしても上目遣いで俺を見る。
(…っく)
「…ったく、今日だけだぞ」
そう言ってもう何度円堂の宿題を助けたかしれない。
(甘いな、俺も)
自分でさせなければ円堂の為にならないのは分かっている。
しかし普段あれだけ頼りがいのあるキャプテンをしている円堂が、自分に(だけ、ではないのが残念だが)時々見せるそんな特別な表情が、嬉しくないわけがないし、ほだされずになんていられない。

「次は自分で…」
やるんだぞ、そう言いかけてもう一度隣を見て、やはり違和感を感じた。
(…円堂って、こんなに後ろを歩く奴だったけ?)
先程気付いた違和感、円堂の歩く位置はやはり俺の一歩後ろだった。
それは学校に着くまで変わらなかったが、円堂に直接「どうした?」と声を掛けることを躊躇う程、それ以外の事は全てがいつも通りだった。





(円堂のやつ…どうしたんだ?いつもだったら一歩うしろどころか、二、三歩は先を歩いて行くのに)
授業中、ぼんやりとそんな円堂のことを考えた。
小さな事なのだが、なぜだか酷く気にかかった。
(でも、少しだけ懐かしい、かな)
そして、自分達がまだ小さい時の事を思い出していた。
円堂守という男は、昔からあのずっと調子で、明るく元気、真っすぐで優しい…そんな奴だったけど、昔は今よりもほんの少し臆病なところあった。
ついでに今と同じく俺の方が足が速かったから、円堂はいつも俺の後ろをついて歩いていた。
(あいつ、何かある事に俺の服の裾引っ張ってたよな)
思い出して、なんだかくすぐったいくらいあったかい気持ちになる。

(そんなだったあいつが俺の隣を…更にその一歩先を進むようになったのは、一体いつからだっただろう)
多分、円堂がサッカーを始めてから…だとは思うが詳しくは思い出せなかった。
調度その頃から俺も陸上を始めたから、自然と会う時間自体減っていって…。

(いつの間にか…あんなに強いやつになってた)

それは友人としてはとても誇らしく、ずっと片想いを続けている身としては少しだけ寂しいような…そんな気がしていた。
(だから円堂に助っ人頼まれた時は…凄い嬉しかったんだよな)
サッカー部の危機に、真っ先に円堂が頼ったのは紛れも無い俺自身だった。
(やっぱり円堂には俺が必要なんだ!…なんて一瞬思ったなぁ)
しかしそこからは俺の方が円堂に引っ張られてばかりで、ついでに円堂の隣はいつの間にか豪炎寺と鬼道に取られてしまった(取られた…は、おかしいか…元々俺のものじゃなかった)。
「…ぜまる、風丸!」
「っ!はいっ!」
いきなり名前を呼ばれて、俺は跳ねるような勢いで意識を現実へと戻した。
「授業より大切な考え事か?」
にっこりと笑う数学の先生が恐ろしい。
「いや、えっと…」
「あとで職員室にこい」
「…はい」
多分資料運びでもさせられるんだろう…。
俺はがっくりと肩を落として返事をした。





「風丸!どこ行くんだ?部活一緒に行こうぜ!」
放課後、荷物も持たずに席を立った俺に円堂が駆け寄って声を掛けてくれた。
「悪い円堂、職員室…行ってくる」
お前もさっき見てただろ?
そういうと円堂は一瞬、驚いたような…困ったような…ホッとしたような、よく分からない表情をしたのだが、すぐにいつものあの笑顔に戻って「分かった!じゃあ先行くな!」と言った。

(なんだ?今の…)





用事を済ませ(呼び出しは案の定、資料運びだった)部活に顔を出すと、すぐに俺を見つけたらしい円堂が大きくこちらに手を振った。
「早くこいよ風丸ー!」
「おう!」

ほかの皆にも軽く挨拶をして、今日の練習に入った俺に、スイスイと円堂が近寄ってきた。

ぎゅっ。

そして何故か一度手を握られて…。
「どう、したんだ?」
勿論嬉しいのだが困惑の方が大きかった。
「ん、なんでもない」
ニコッと笑った円堂がまたゴール前へと駆けて行った。

「?」
訳が分からず首を傾げていた俺のもとに、今度は鬼道がやってきた。
「やっぱりお前か」
「は?」
しげしげと見つめられても意味が分からない。
「どういうことだ?」
「いや…円堂がずっと落ち着きがなかったんだ、練習に集中出来ていなかった、ソワソワして校舎の方ばかり気にしてな」
まったく、と呆れたように鬼道がため息を付くがその表情は少しだけホッとしているように見えるから、恐らく円堂の様子は元に戻ったのだろう。
「えっと…つまり?良くわからないんだか」
円堂の様子がおかしかったのは分かったが、鬼道の言った「やっぱりお前か」の意味がわからない。
「まだ気づいてないのか?」
少しだけ驚いた顔をされて、俺は「?」とさらに困惑した。
「…お前がいないから落ち着かなかったんだろう、最近ずっとベッタリじゃないか」
面白くなさそうなニュアンスを感じるのは多分気のせいじゃない。
(円堂が俺にベッタリ…って)
「…っ!いっいやでも今までだって俺が練習に遅れて来るのはたまに…!」
「まぁ理由は胸に手を当てて考えるべきだな」
…は?
(なんか鬼道…怒ってないか?)
訳が分からないままの俺を置いて、鬼道が練習に戻って行った。
俺も突っ立っている訳にも行かないから練習の輪の中へと駆けた。





「じゃあ今日の練習はここまで!」
暗くなった空を見上げて円堂が宣言すると、皆口々に「疲れた」やら「お疲れ」と和やかに談笑しながら部室へと戻り始めた。
俺は自分のミネラルウォーカーとタオルを持って、部室へ戻ろうとしたのたが、ツイッと服の袖を捕まれ足を止めた。
「?…っ!円堂!」
そこには俺の服を掴んで(気のせいか一瞬泣きそうに見えた)円堂がいた。
「一緒に、帰ろう…ぜ?」
パッと手を離して、少し罰が悪そうに笑う円堂に、俺は「あぁ、いいぜ」と笑ったが…。

テクテクテク…。
チョコチョコチョコ…。

今日の練習はあーだった、こうだった…と絶えずいつもと同じ様に会話は弾むが、やはり円堂が俺の一歩後ろをついて来る。
鬼道に言われた「ずっとベッタリじゃないか」を思い出す。
(確かにそうだ)
最近ずっと円堂と一緒に学校に来て、帰っている。
前からそうではあったが、最近は随分と徹底している気がする。
俺は嬉しいだけでなんの不満も無かったから気が付かなかったが、今だってそうだ。円堂がチョコチョコとそれこそ幼いあの頃の様に俺の後ろをひたすらついて来る。

チラッ。
斜め後ろを振り返れば、ニッコリと上機嫌な円堂と目が合う。
(…っくそ、可愛い)

だがしかし問題はそこではない。
じゃあさっき鬼道が言っていた練習に集中出来てなかったって…。
多分これは、嬉しい、可愛いだけで流してしまっていいことではない。
(…どうしたんだ?円堂)
もしかして円堂もようやく俺を…!なんて甘い夢は見ない。何年片思いを続けてると思っているんだ。

(そういう、ことでもない…きっと)





部室に着いて、着替えをして、円堂が部誌をまとめるのを待って、他の部員が皆帰るのを見届けた。
二人きりになった部室で、今だ!と立ち上がった。
円堂に何も言わずに部室を出る。

途端に、
「風丸!」
案の定、飛び出してきた円堂が俺の服を捕まえて叫ぶ。
(なんで、なんでこんなに焦ってるんだ?)
やはり明らかに円堂の様子がおかしかった。
「…円堂?お前、どうしたんだ?」
神妙な顔で俺が問い掛けるのを、円堂は慌てて笑顔を取り繕った。
「えっ!いやっ、悪い…ははは、…あ、トイレか?」
「いや、お前の様子がおかしいから試したんだ」
ここで嘘をついても仕方がないから、正直に言えば円堂は一瞬驚いて、俯いてしまった。
(…本当に、どうしたって言うんだ?あの円堂が…)
今度は逆に、俺が円堂の手を引き、部室へと連れて入った。

「円ど…」
「ごめん、風丸…」
円堂を部室の椅子に座らせて、名前を呼ぼうとしたら小さな謝罪に遮られた。
「なんか、俺さ…急に怖くなっちゃってさ」
自身の異変を俺に気付かれた事に観念したのか、円堂がポツリポツリと話し始めた。
「怖い?」
円堂らしくないその言葉に首を傾げる俺に、円堂はゆっくりと顔を上げて泣きそうな顔で笑った。
(円、どう、が…)
そんな表情は長い付き合いの中で初めてだった。

「…風丸が、またどっか行っちゃうんじゃないかって、最近怖くて仕方、ないんだ」

そう言われて、俺はハッとした。
そして思い出す。
自分が円堂にした裏切りを。

(…あ)

「ごめんな、もう…終わった事なのに、俺…俺さ…駄目なんだよ、風丸いないと…駄目なんだ」
十年来…一緒にいる幼馴染みの、初めて聞く弱音だった。
「皆元に戻ったのに、全部終わったのに、先に進まなきゃいけないのに…わかってるんだけどさ、でも…また俺、知らないうちに誰かを…お前を傷付けてて、また…皆俺の前からいなくなっちゃうんじゃないか、って考えたら…さ」
(違う、違うよ円堂…お前が悪いんじゃないんだ)
円堂の震える声に、何か言葉を掛けなくちゃと焦るのに、俺は一歩も動けないでただただ自分の行いを後悔した。
(傷、付けたのは俺の方だ…円堂だって、そうだ…そうだよな、辛くない訳が、無かったのに)
あの天真爛漫を絵に描いたように自由で明るい、元気な存在を…此処まで追い詰めたのは、紛れも無い…俺自身なのだ。
(俺は…『お前は強いから大丈夫だ』って決め付けて、その強さに勝手に焦がれて…嫉妬して)
(馬鹿だ、俺は本当に…何も分かってなかった…)
鬼道が胸に手を当てて考えろって言っていた意味も、ようやく理解した。
(ごめん、ごめんな…円堂)
「ごめんな、風丸…」
こんな俺、情けないよな、格好悪いよな…。
もう一度呟かれた円堂の謝罪に、弾かれたように俺は円堂を抱きしめた。

「!」
「ごめんっ、ごめんな、円堂…お前は悪くないんだ、ごめん、ごめんな…」
いっぱい傷付けて、いっぱい苦しめて、いっぱい悩ませて…。
「俺、もう絶対お前から離れないから…ずっと、ずっと一緒にいるから」
(お前がさらなる高見を目指すなら、俺も必ず着いていくから、絶対にもう諦めないから)

だから、だから。

「お前は今までのまま…いつものお前でいいんだ」
「ぅ、…あぁ、かぜ、まるぅ…っ」
堰を切った様に泣き出した円堂を強く抱きしめて、俺は。

(今度こそ、もっと強くなろう)
お前の側にいられるように。



強く強く思ったんだ。


++++++
言い訳

gdgdですみません!土下座

「ただ、焦がれていた。」から微妙に続いています。
書きたい事が多過ぎてうまくまとめられない…orz
表現力が欲しいです…。

此処まで呼んで下さってありがとうございました!