日常



自室の扉を開けると、そこでは雷蔵と乱太郎がじゃれあっていた。

「なにやってんの?」
思いの外低い声音になってしまい、自分でも驚いた。

「うわぁっ!!!」
「あ!鉢屋先輩!」

驚きすぎだろ…と言いたくなる程過剰な反応をする雷蔵と、いつも通りの笑顔を向ける乱太郎。

「なっ何って遊んでただけだよ?」
「はい!雷蔵先輩に遊んで貰ってましたー!」
はしゃぎすぎたのだろう、乱太郎は頬を赤らめて息を乱している。
そんな乱太郎を膝に抱いたままの雷蔵はぶつぶつと呟く。
「って言うか三郎、ノックぐらいしてよ…」
「今だかつて雷蔵にそんな事言われた事ありませんが?」

『どう考えてもお前、疚しい気持ちで乱太郎と遊んでたんだろ』と目で訴える。
視線を一瞬逸らした雷蔵が、もう一度俺を見て『ないない、ないない』とへらりと笑って首を振る。

目が泳いでんだよ。

「雷蔵、中在家先輩が探してたぞ」
「え、そうなんだ…なんだろ」
「多分まだその辺にいるんじゃないか?」
「うーん、行くべきか…行かぬべきか」
また得意の悩み癖を発揮仕出した級友に、俺はまた目で訴える。

『行け!』

そんな俺に、ため息を一つついて雷蔵が腰を上げた。
膝の上にいた乱太郎を少し持ち上げて立たせる。

「途中でごめんね、乱太郎くん…ちょっと行ってくるね」
「あっいえ!私の事はお気になさらずに」
素直な乱太郎に、にへらとだらしの無い笑顔を向け、その頭を二、三度撫でて雷蔵が部屋を出ていった。

出ていく雷蔵と擦れ違う瞬間。

「目が笑ってないよ、三郎」

と俺にだけ聞こえる声で雷蔵に言われた。
そんなに顔に出ているだろうか。
少し自己嫌悪だ。

「えーっと…私帰った方が、良いですよね?」
部屋に残された乱太郎は、困ったように笑いながら俺を見上げた。

「なんで?」
「えっと…だって」
「俺とも遊んでよ、乱太郎」
ニヤリと俺が笑ってそう言うと、乱太郎の表情がぱっと明るくなる。
「いいんですか!?」

「わーい」と俺へと駆け寄る乱太郎が可愛くて、俺は屈んで乱太郎の頭を撫でる。
そのまま胡座をかいておいでと言う仕草をすれば、乱太郎は俺の膝へとちょこんと座ってえへへと笑う。

「雷蔵とは何して遊んでたの?」
乱太郎の髪に指に絡ませながら俺が聞くと、乱太郎は「うーん」と少し考えながら…
「最初は勉強を教えて貰っていたんです」
と、雷蔵の机に広げられたままの忍たまの友を指す。
「でもそのうちクラスの話とかになって…」
そのままお喋りしちゃいました。
そう言って笑う乱太郎は、とても無邪気で無防備で、俺はそのまま抱きしめたい衝動に襲われて…


「らーんたろうは本っとうに可愛いなぁーっ」
衝動のままに抱きしめていた。
「うわぁっ!」
抱きしめられてきゃっきゃっとはしゃぐ乱太郎に、更に愛おしさが募る。
もうどうしてくれようかと、好き好き可愛いーっとじゃれていると、再び部屋の扉が開かれる。

「うわっ!」
声を上げたのは扉を開けた方で、気配で何と無く分かっていた俺は『邪魔しやがって』とじとりとそいつらへ視線を向ける。
「久々知先輩、竹谷先輩こんにちはー!」
またしてもニッコリと来訪者へ笑顔を向ける乱太郎に、
(素直すぎるよなー…ま、そこが良いんだけど)
と一瞬思う。

「三郎今お前すげぇ悪い顔してんぞ」
苦笑する竹谷に、くるりと背を向けた。
「って言うか…」
断りもなく久々知が部屋へ入って来たと思うと、俺の膝の上から乱太郎を抱き上げる。

「わわっ」
「ちょっ、とんなよ」
抗議の声を上げるが、そんなものどこ吹く風と久々知は乱太郎を抱っこして、じとりと俺を見返す。

「駄目、なんか三郎が乱太郎抱いてると卑猥」
乱太郎が汚れる。

「はぁ!?」
さらりと言われたとんでもない言い掛かりに俺が声を上げれば、竹谷が「確かに」と腹を抱えて笑い出した。
乱太郎は意味が分からずきょとんとしている。

そうこうしているうちに、用事を済ませた雷蔵が帰って来て、結局俺と乱太郎の二人きりの時間は終わりを告げた。






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五年×乱が書きたくて…
って言うか久々知に「三郎が乱太郎抱いてるとなんか卑猥」って言わせたかっただけだったり(どんだけ

私は凄い楽しかったです!←すみません(土下座

ここまで読んで下さって本当にありがとうございました!